第44話

いつでも変わらない愛の残り香
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2026/01/20 11:00 更新
煙雨
、、、北極星

ほぅと吐き出した白い吐息が真冬の冷たい冷気にかき消されてどこかへ消えた
かじかむ手をなんとか握って暖を取りながら、煙雨は夜空を見上げた

変わらず北極星は、笑っているのに

煙雨
(本家への連絡は終わったし、後は)
煙雨
(、、、何も、しないで待つだけ)

なんのために生きてきたんだ
なんのために裏切ってまでこうしているんだ

あの子達を守ると決めて手離したのに、どうして守れていないのか
そんなの煙雨自身が知りたいのに

煙雨
(棗樹)
最愛の『弟』の名前を

煙雨
(小桜芽)
最愛の『息子』の名前を

この一人きりの夜空の下で、思いっきりに人目をはばからずに叫べたのなら
どれだけ良かったか



















桜影
今宵は冷えますね、煙雨さん

煙雨
ッ!?
驚いて振り向く
そこには
煙雨
桜影、さん
桜影
なかなか眠れなくて、、、笑

雪道なのに足音は無くて、気配も無くて、殺意も哀れみも憎しみも羨望も何も無い空虚な感情がひしひしと伝わる不思議な彼は
煙雨を見詰めていた

煙雨
、、、そう、でしたか
煙雨
しかし、冷えましたでしょう?共に戻りましょう?お付きの方は?
桜影
私が武士の端くれと思いで?
煙雨
ッ!?
桜影
私達は端から見ればただの旅の者、えぇ武士だとは勘繰られても致し方無いとは思いますが
桜影
お付きをつけるほどの身分と、なぜ思いで?

桜影は鋭い視線で煙雨を刺した
それに堪らなくなって煙雨は視線を逸らす

桜影
まぁ、実際合ってますし
煙雨
えッ!?

煙雨は咄嗟に後ろを振り返った、何も無いのに何かに後ろを囲まれているような気がして怖くなった
目の前の彼が、笑う

まるで幼子のように

桜影
私に、見覚えは?
煙雨
え、、、

綺麗に整えられた黒髪、桜のような儚さを併せ持った桃の前髪、火照った頬と白い顔
なにより、引き込まれるような美しい櫻の瞳

煙雨
櫻宮のッ

煙雨は知っている、この特徴を持った一族を、先の反乱で儚く命を散らした一族を、その一族の希望としてどこかに消えた幼子の名前を

私の愛し子達を託した、煙雨が信じた唯一の一族

桜影
御初に御目にかかります

櫻宮 孌
櫻宮当主 櫻宮孌と申します
櫻宮 孌
以後、お見知りおきを

私の棗樹を、小桜芽を、こんなドロドロとした世界から匿って強くたくましく育ててくれた
神様のような人達の末裔

煙雨
貴方様がっ
煙雨
棗樹は!!小桜芽は!!無事なのですか!?

煙雨は忍なんかんじゃ無い、小さな命を見捨ててしまった守れなかったことに悔いるいっぱしの母親
子を大切に思って何が悪いのだ

櫻宮 孌
それについて、お話しましょう?
櫻宮 孌
煙雨殿?

孌は潤った瞳を細めて、煙雨の冷えた手を包み込んだ


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こちら、推し(桃様)の隣でオタクやってる紫様のお話です
バレたくなくてタジタジしてて、そこがたまらなく愛おしい作品です!

推しの隣で推しを光らせる運命を背負ってオタクできる紫様を心底羨ましく思いました笑
ぜひ読んでみてください!

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