ほぅと吐き出した白い吐息が真冬の冷たい冷気にかき消されてどこかへ消えた
かじかむ手をなんとか握って暖を取りながら、煙雨は夜空を見上げた
変わらず北極星は、笑っているのに
なんのために生きてきたんだ
なんのために裏切ってまでこうしているんだ
あの子達を守ると決めて手離したのに、どうして守れていないのか
そんなの煙雨自身が知りたいのに
最愛の『弟』の名前を
最愛の『息子』の名前を
この一人きりの夜空の下で、思いっきりに人目をはばからずに叫べたのなら
どれだけ良かったか
驚いて振り向く
そこには
雪道なのに足音は無くて、気配も無くて、殺意も哀れみも憎しみも羨望も何も無い空虚な感情がひしひしと伝わる不思議な彼は
煙雨を見詰めていた
桜影は鋭い視線で煙雨を刺した
それに堪らなくなって煙雨は視線を逸らす
煙雨は咄嗟に後ろを振り返った、何も無いのに何かに後ろを囲まれているような気がして怖くなった
目の前の彼が、笑う
まるで幼子のように
綺麗に整えられた黒髪、桜のような儚さを併せ持った桃の前髪、火照った頬と白い顔
なにより、引き込まれるような美しい櫻の瞳
煙雨は知っている、この特徴を持った一族を、先の反乱で儚く命を散らした一族を、その一族の希望としてどこかに消えた幼子の名前を
私の愛し子達を託した、煙雨が信じた唯一の一族
私の棗樹を、小桜芽を、こんなドロドロとした世界から匿って強くたくましく育ててくれた
神様のような人達の末裔
煙雨は忍なんかんじゃ無い、小さな命を見捨ててしまった守れなかったことに悔いるいっぱしの母親
子を大切に思って何が悪いのだ
孌は潤った瞳を細めて、煙雨の冷えた手を包み込んだ
【交換宣伝】
こちら、推し(桃様)の隣でオタクやってる紫様のお話です
バレたくなくてタジタジしてて、そこがたまらなく愛おしい作品です!
推しの隣で推しを光らせる運命を背負ってオタクできる紫様を心底羨ましく思いました笑
ぜひ読んでみてください!













編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。