第2話

雨降る日の憂鬱[りょう]
2,032
2019/11/08 08:04
[クリスマススカイ番外編:セフレ]


私はあなた、今日は雨の日だから心が弾む。


雨だと会えるんだ。りょうに。


YouTuberもしつつ昼間は別の仕事してるらしく、別の仕事は外だから雨がたくさん降る日は早めに帰れるんだって。

蒸し暑い、真夏の雨すらも私には幸せなことだった。


昼過ぎ、やっぱりLINEが来る。


りょう「今日、早めに終わりそう。家来て。」


少し苦しい胸と、言いたい事を抑えて「OK」とだけ返事をした。

重たい女だとは思われたくないから。








私は所謂セフレ、だ。








分かっていた。一度シてしまえばその先に未来がないことも。



冷たい目をするくせにこうやって呼ぶりょうを見ればわかる、都合がいい女なんだろうって。



他に女がいることも分かってた。



でも雨の日は決まって私だった。



だから、雨の日は大好き。



憂鬱そうに窓の外を見つめるりょうが、
大好き。




今日も家に行くとすぐにシャワーを浴びる。




タオル一枚で上がった私を見てりょうは言う。




りょう「これじゃデリヘルだね、たまには飯でも行く?」



行く気もないくせにそう言うから私は空気を読む。



あなた「行かない。りょうも脱いで。」



必死に笑顔を作る。


必死に


行為が好きなふりをした。


好きなのはりょうなのに。


りょうだからするんだよ、
なんて言えないから。



りょう「いつも通りだね。まぁ、模範解答だよね。」


チクチクとした言葉が身体中に刺さる。


強い力で引き寄せてキスをする。


優しさなんてない、感情もないいつものキスだ。


知ってたよ、キスの間、時計見てることくらい。


一瞬唇を離した時に見てたよね、分かってる、終わったら帰るから。


気付かせないで、夢見させてよ。



りょう「寝て。」


お互い簡単な愛撫、

少しだけ強すぎる力に、また私への気持ちが1ミリもないことを思い知らされる。



心も体も掻き乱されて泣きそうになる。



少しだけめんどくさそうにする、そんな人でも好きだから、濡れる。


自分のことも大嫌いだ、嫌なはずの体が反応してしまうのも、好きで好きで離れられない心も、全てが嫌いだ。


何も言わずに腰を掴んで挿入する。

抑揚なんてない、早くイって、帰したいのだろう。


最初から強い刺激に声が漏れる。


声は雨の音にかき消されるように沈んで、なかったことにされる。

今日の私はなんかおかしかった。


いつもならヘマはしないはずだった。


雨のせいで重くて痛い頭のせいなのか、
それとも心が限界だったのかはわからない。


あなた「好きって、言って。」


りょうは何も言わずにキスをした。腰は止まらないまま、

これで満足だろう、と言いたげな顔をする。



今顔を見ると、泣いてしまいそうだ。



両手で顔を隠して感じてる馬鹿な女のふりをする。








いつも、りょうは果てるとすぐにシャワーに入る。


上がると私に入れば?と言う。




軽くシャワーを浴びて、出るとりょうは出かける準備をしている。


いつものことだ。




あなた「今日はどこに行くの?」

りょう「男友達とクラブ。」

あなた「へぇ、女引っかけるの?」

りょう「…さぁ。」


適当な返事で、また胸は痛くなる。






深夜23時過ぎ、りょうからLINEが来た。




「あなた、もう雨の日にも呼ばないから。好きな子出来たかもしれないわ。じゃあ。」





私があんなことを言ってしまったからだろうか。

でもその文章は確かに私に宛てたもので、

色んな女に送るには、雨の日という言葉は不自然で、

初めて、りょうがくれた特別な文章だった。



さっきまでりょうに触れてた唇を噛み締めて、

さっきまでりょうが触れてた頬にポロポロと涙が流れた。





明日は晴れるといいな。


期待してしまうから。






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