廊下を歩き、地下へ向かうベテランメイドサリーとカリファ。
カリファは、地下へと続く階段を降りていく。その後へ続くベテランメイド。
ワインの保管庫にたどり着く2人。大量にあるワイン。大抵の物は樽で保管されている。しかし、ごく稀に瓶で
仕入れる時がある。それは希少のものだ。
それを見てーー否、聞いてニヤリと笑うカリファ。
ニコリと笑うベテランメイド。
樽が並んでいるさらに奥へ進む。そこには、ひっそりといくつかのワインラックが置いてあった。ベテランメイドが真っ直ぐに1つのラックに進む。立ち止まると、ジッと見つめ始めた。すると、突然手を伸ばし、1本のワインを取り出した。
ペコリとお辞儀をするベテランメイド。
カリファはワインを受け取った。マジマジと見つめる。
カリファはベテランメイドにワインを戻す。
カリファは歩き出しだ。その後をベテランメイドもついて行く。
そう言うと、2人そろって地下への出口へと向かって行った。
カリファがのっそり食堂にあらわれる。そう、これは全て演技なのだ。まだ、処刑の事を引きずっているという。
心配そうにターラ公爵夫人が立ち上がる。
カリファの眉が一瞬わずかに上がる。だが、すぐに表情を戻した。
ターラ夫人は嬉しそうに両手を合わせ、口元にもって行く。
ふふ、と笑うドーザ公爵。
ドーザのセリフで、ワインボトルを頭に打ちつけたくなったが、カリファは必死におさえた。
笑顔で、自分の席につく。
ベテランメイドサリーが、カリファの椅子を引く。
同時に、食事の準備が開始される。次々と料理がテーブルの上に置かれて行く。
4人とも同じポーズをとり始める。カリファも親指付近に額をつけ、目をつぶる。
目を開け早速、食前酒を1口飲む。甘めのロゼだ。
カリファは思い出したように、そうそうと嬉しそうに両手を合わせる。
ドーザは食前酒を飲み終える。
ベテランメイドサリーが、ワゴンをドーザの横まで持って行く。ワゴンの上には、ワインクーラーとグラスがおいてあり、丁度ワインを冷やしていたようだ。
赤ワインを見て喜ぶドーザ。
ベテランメイドがコルクを開ける。毒味はするか否かを尋ねたら拒否をした。ベテランメイドが半分より少なめにグラスに注ぐ。
ドーザは嬉しそうに、グラスを持ち上げ傾けて色を確認する。白フキン越しなので色がよくわかる。そして香りを嗅ぐドーザ。
カリファは緊張し、思わず食べる手を止め見入ってしまっていた。しかし、ロレンツォ国王が美味いなぁ、とぼやき、ハッとしカリファもゆっくり食べ始めた。
ドーザがワインを少量、口に含んだ。舌の上でワインを転がし、酸味などをチェックする。そして、もう一度香りを確認する。
毒はすぐには効かないようだ。聞いた話だと、先にめまいがし、ゆっくりと眠るかのように効いてくるらしい。
そして、もう一口飲み喉ごし等を確認する。
嬉しそうに笑うドーザ。カリファも“嬉しそうに”両手を口元に持っていった。
ドーザがグラスをテーブルに置き、おかわりを要求する。
カリファはそんな様子を嬉しそうに見ながら、料理を口に運ぶ。そう、カリファの目には、死神の鎌がドーザの喉元にあるように見えて、仕方ないのだ。刻一刻と、死へのフィナーレがーー。
先に食べ終えたのは、ターラ夫人だった。食後用のワインを待っている。国王もまもなく食べ終わろうとしている。
ターラ夫人がそういえば、と切り出す。
ふふっ、と笑うカリファ。
カリファがベテランメイドサリーにお願いする。
すると、丁度ワインクーラーに入っていた白ワインを取り出した。それを、持ち国王の元へ寄る。代わりにベテランメイドの位置に中堅メイドが入り、ドーザの世話をする。しかし、すでに目は虚ろだ。
ワイングラスを再び、テーブルに置く。
もはや呂律が回っていない。注ごうとした中堅メイドを止める、ハクロ執事。
はしたなくも、口からよだれまで垂らしている。執事は、眉間にシワを寄せた。ーーこれは明らかにおかしい。
執事が、中堅メイドに医者を呼ぶように小声で伝える。そして、ドーザの腕を肩に回す。異変を感じ、ターラ夫人が心配する。
もはやなにを言っているのかわからない。
執事が、ドーザを担ぎ上げたその時だ。バランスを崩し、その場で倒れた。
カリファは慌ててドーザに駆け寄り、しゃがみ混むと身体を揺さぶった。そして、涙目になる。
執事が脈拍数を測る。
カリファは、ドーザにうずくまるように、その場で泣いた。しかしその時ドーザの耳元でささやいたのだ。
カリファは立ち上がり、よろめくフリをする。その様子を、ドーザは遠くなって行く意識から見つめていた。カリファに腕を伸ばすドーザ。
ドーザは、執事によって寝室に運ばれていった。
カリファは、お爺様、とつぶやく。そして、国王に振り返り、敬礼をした。
国王を腕の隙間から見る。その目は“復讐”と“野心”が込められていた。その視線に思わずゾクリとする国王。ーー父親がこんな状態なのにも関わらず、もう政治の話だと?それにこの目つきなにを考えている?
国王は半ば恐怖心に押され気味に頷いた。
カリファの言葉にうなずく2人。敬礼をやめ、カリファは食堂を出て行った。
カリファは廊下を歩みながら、喉奥で笑った。


















編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。