数日後。
私は何も告げないまま、静かに宝塚を去った。
そして後日、公式から
『98期 娘役・あなたの名字あなたの下の名前 退団』
という短い発表が出された。
永久輝せあは、その文字を見て、すぐに電話をかけた。
繋がらない。何度かけても同じだった。
居ても立ってもいられず、
永久輝せあは朝美絢のもとを訪ねた。
朝美絢は一瞬だけ目を伏せてから、静かに聞いた。
永久輝せあは頭に小さな疑問符を浮かべる。
朝美絢は小さく息を吸った。
永久輝せあの喉が、ヒクリと鳴った。
その言葉に、朝美絢は一度だけ迷ってから、
口を開いた。
永久輝せあは言葉を失った。
そして続ける。
永久輝せあは震える声で繰り返す。
朝美絢は静かに頷いた。
永久輝せあの胸に、これまでの光景が一気に押し寄せる。
何気なく言っていた言葉。
当たり前だと思っていた日常。
ポロリと涙がこぼれた。
朝美絢はそっと視線を合わせて言う。
永久輝せあは、ゆっくりと頷いた。
胸の奥に残る後悔と、それでも消えない想いを抱えながら。
そう信じるように。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!