とはいえ、引退ということは受験が本格的に近くなってきたということ。
正直永瀬のこと考えるより勉強だ勉強。
よく聞け私、私は永瀬みたいに成績優秀ではないんだからな。覚えとけ。
しっかり勉強する気を引き出して校舎から出て、…少し後ずさりしてしまった。
何故かというと壁にもたれかかってる永瀬がいたからで…
逃げるように去ろうとした私の肩を、永瀬の手が掴んだ。
これ以上近づかれると勉強になんか身が入らなくなるわ…!
というか、やっぱりこの前のこと怒ってる…?
…今の聞いた?「一緒に帰ろ」だってよ、
そんなん断ろうにも断れないじゃん。
私は避けるのを諦めて、永瀬と一緒に歩き出した。
不意に永瀬の怪我のことを思い出して、歩幅を合わせる。
突然永瀬の腕が回ってきたと思えば、0.5秒くらいの速さで身体がくっついた。
急な温もりにパニックになった私の横を、自転車がすごいスピードで通り過ぎて行ったのはその後すぐのことで。
校門を出て駅まで歩いていたはずなのに、永瀬に手を掴まれて逆戻り。
走れはしないけど、早歩きで進んでいく。
いや…意味わかんない。
けど、その一言で言葉が出なくなって、私の足は永瀬についていくだけ。
手首の温もりにドキドキして、繋がっているそこばかりを見てしまった。















編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!