私は国木田から渡された資料を見ながら、
太宰と谷崎に淡々と説明していく。
太宰のほわほわとした偽表情の中に潜む
鋭い視線に怯むことなく、
私は目を据えてただ意見を述べる。
淡々と告げた。
私はそう言って、その場から立ち去った。
だってこれ、と谷崎が続ける。
太宰は、口角を上げて呟く。
陽の当たらない、とある路地裏。
カタカタカタ、とキーボードを叩く音が鳴る。
この暗闇。この異様なまでの静けさ。
いやあ、心地が良い。
裏社会から抜け出せない"情報屋"という存在にとって、
ここまで安住の地と言える場所は無いだろう。
ゴォン、電子音が鳴る。
2人と会話する10分前に、
荒削りなカマをかけた甲斐が有った。
口を開いたその瞬間、
私は気配を感じて振り向いた。
振り向いた先。視線の端に、砂色外套の裾が見える。
ゆっくりと上に顔を上げると、そこに居たのは勿論。
私は僅かな動揺も見せないように、
全力で心を落ち着かせる。
太宰が腕を広げながら、態とらしく言う。
太宰は私の背後にある物を見ながら、
「ところでさあ」とにっこり、微笑みながら言う。
……ああもう、矢張り面倒くさい男だな。
五月蝿いな…。
まあ全部そういう設定だけど。
こういう場合も予測して、高城と一緒に
霜月あなたの偽名の設定を隅々まで決めたんだからね。
私が電脳機器の方に向き直ると、
太宰が後ろから覗いてくる。
太宰の言葉を遮って口を開く。
私は電脳機器を閉じ、小さなケースに仕舞う。
立ち上がって、太宰を見て言った。
太宰の何か言いたげなその表情が見えてはいたが、
見えない振りをして私は歩みを進めた。
さァ、彼女は一体、どんな挽回を見せてくれるかな?












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!