仮免が終わって寮に帰ってくれば、もう外は真っ暗だ。
私はモヤモヤとした気持ちのまま、共有スペースにある椅子に座り込んでいた。
そう言われて見上げると、弟がすぐそばで立っていた。
弟は向かい側の椅子を引いて座ると、私を見つめる。
だって、こんな時間になっても帰ってこないんだもの。
あれから2日以上たってるのに...。
いくらなんでも心配だ。
けど心配なことには変わりないの。
私が言いたいことを感じ取ったのか、弟は無言になる。
なんと言えばいいのかわからない、とでも言いたげだった。
早く...早く帰ってきてよ。
思わず自分の手で拳を作った、その時だ。
寮のドアが開いた。
峰田くんがそう言って、誰よりも早く駆け出していく。
それを見た皆も、峰田くんのあとに続くようにしてドアの方へと駆け寄っていく。
それを見て一瞬ぼけっ、としていた私だったが、すぐに気を取り直し、みんなと同様に駆け寄った。
みんなが帰ってきた緑谷くんたちに言葉をかけるのを、私はなにも言わずに見つめていた。
無事でよかった。
声をかけたいのは山々だけど、疲れている彼らをこれ以上付き合わせるわけにはいかない。
それに明日はまた仮免講習。
早く寝ないといけないもの。
と、その時。
弟のスマホが音をたてた。
正直、ここにいても話せないだろうからね。
私はそう思って大人しく弟の方についていき、静かに寮の外に出た。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。