第409話

No.407
7,675
2021/04/05 07:23
あなた
...







仮免が終わって寮に帰ってくれば、もう外は真っ暗だ。





私はモヤモヤとした気持ちのまま、共有スペースにある椅子に座り込んでいた。







轟焦凍
あなた、大丈夫か?







そう言われて見上げると、弟がすぐそばで立っていた。





弟は向かい側の椅子を引いて座ると、私を見つめる。







轟焦凍
...緑谷たちのこと、まだ心配なのか?
あなた
...うん







だって、こんな時間になっても帰ってこないんだもの。





あれから2日以上たってるのに...。





いくらなんでも心配だ。







轟焦凍
気持ちはわかるけどよ。今ここで悩んでても仕方ねぇんだぞ?
あなた
わかってるよ、それは







けど心配なことには変わりないの。





私が言いたいことを感じ取ったのか、弟は無言になる。





なんと言えばいいのかわからない、とでも言いたげだった。






早く...早く帰ってきてよ。





思わず自分の手で拳を作った、その時だ。





寮のドアが開いた。







峰田実
帰ってきたァアア!!!奴らが帰ってきたァ!!







峰田くんがそう言って、誰よりも早く駆け出していく。





それを見た皆も、峰田くんのあとに続くようにしてドアの方へと駆け寄っていく。





それを見て一瞬ぼけっ、としていた私だったが、すぐに気を取り直し、みんなと同様に駆け寄った。







八百万百
みんな心配してましたのよ
上鳴電気
ニュース見たぞおい!!大変だったな!
峰田実
大丈夫だったかよ!?
青山優雅
お騒がせさんたち☆
砂藤力道
まァとにかく、ガトーショコラ食えよ!







みんなが帰ってきた緑谷くんたちに言葉をかけるのを、私はなにも言わずに見つめていた。





無事でよかった。





声をかけたいのは山々だけど、疲れている彼らをこれ以上付き合わせるわけにはいかない。





それに明日はまた仮免講習。





早く寝ないといけないもの。







轟焦凍
緑谷たち、無事みたいだな
あなた
うん
轟焦凍
よかったな
あなた
...うん







と、その時。





弟のスマホが音をたてた。







あなた
鳴ってるよ
轟焦凍
ああ...。!!
あなた
?どうしたの
轟焦凍
...ちょっと、ついてきてくれ
あなた
え、うん。わかった







正直、ここにいても話せないだろうからね。





私はそう思って大人しく弟の方についていき、静かに寮の外に出た。

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