今朝買ってきたというロープで青山くんを固定するのを手伝い、それが終わってから急いで自分の持ち場に移動する。
もうすぐで2回目のサビがくる。
そのサビに入る瞬間が、私たちの出番だ。
峰田くんのハーレムパートが終わり、爆豪くんがドラムをすごい勢いで叩き出す。
そしてサビに入る直前、切島くんが叫んだ。
いやどんな呼び方だよ。
そう思いながらも、私は二人と同時に炎を放つ。
炎を弟の氷柱を囲むようにして、私は円状にいくつも配置する。
ん、こんなもんかな。
観客席は大盛り上がりだ。
お茶子ちゃんがそう言って、梅雨ちゃんの舌で観客席を移動しながら観客たちにハイタッチをしていく。
それで浮いた観客を、三奈ちゃんたちダンス隊がテープで安全確保。
峰田くんの周りには女子たちが集まっていて、完全にハーレム状態。
切島くんには弟の氷を持たせ、上で走りながら削ってもらっている。
ダイヤモンドダストを表現するためだ。
舞台を見ると、飯田くんがロボットダンスをしていたり、ギターを弾いている上鳴くんを砂藤くんが持ち上げている。
もうやりたい放題だ。
だけど、すごく楽しい。
そんな中で、横にいた弟が声をかけてきた。
一瞬だけ、脳内が鮮明になる。
まるで、二人だけの時間が流れているように。
笑顔で答えると、弟は満足そうに微笑んだ。
そして、いよいよラストスパート。
響香ちゃんの歌声は、途切れることなく響き渡っている。
観客席を見ていた私は、ある人たちを見つけて目を見開いた。
通形先輩と壊理ちゃんだ。
壊理ちゃん、笑ってる...!
その姿を見て、ふっ、と微笑む。
よかったね、緑谷くん。
君の願い、叶ったみたいだよ。
歌が終わり、残りのミュージックだけが響く。
みんなは最後の最後まで、本当に楽しそうに踊っていた。
爆豪くんのドラムのあとで、一気にベースやギターなどの音が鳴り響き、演奏が終了する。
私たちが行った演奏の曲名は、『Hero too』。
現在の観客席は、大盛り上がり。
私たちの出し物は、結果、大成功に終わったのだった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。