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第8話

🐰🍀
289
2025/07/08 12:26 更新


撮影が終わったのは、夜9時を回ったころだった。

二人で向かったのは、スタジオ近くのこぢんまりした韓国料理店。

個室ではないけど、壁際の半個室席に通された。

メニューを開きながら、あなたがぽつり。
.
.
……撮影後に共演者さんとごはん行くの、ほとんど初めてかもしれないです
김도영
김도영
え嘘。嫌だった…?
.
.
嫌ならお断りしてますㅎㅎ
김도영
김도영
よかったㅎ
確かに僕もそんなにないかも。
男同士ならあるけど…
.
.
じゃあ、お互いにレアな夜ですね
김도영
김도영
うん。……激レアだよ

その言葉を繰り返したドヨンの声は、どこか優しくて、落ち着いていた。

しばらくして運ばれてきたのは、テンジャンチゲとサムギョプサル。
湯気が立つ鍋に箸を入れながら、ドヨンが静かに言った。
.
.
……ちょっとだけ飲みます?
あなたは焼酎グラスをクイッと飲むふりをしてドヨンをチラッと見ては微笑む。
ドヨンは一瞬だけ間を置いて、笑った。
김도영
김도영
ちょっとだけㅎ

ふたりの前に並んだ、ソジュの瓶と小さなショットグラス。
スタッフもマネージャーもいない、まったくの“オフ”の空気。
.
.
じゃあ、ひとまず……おつかれさまでした!
チャンッ!
김도영
김도영
チャンー

小さくグラスが触れ合う音。
その音だけが、食堂のざわめきから浮いて、澄んで聞こえた。

ドヨンはソジュを一口だけ飲み、眉をしかめた。
김도영
김도영
沁みるー
.
.
うわ、久しぶりに飲んだら効く……
.
.
ドヨンさん、強い方ですか?
김도영
김도영
弱くはないけど、今日は油断すると眠りそう
.
.
じゃあ、ほどほどにㅎㅎ
あなたもグラスを口に運び、少し目を丸くする。
김도영
김도영
酔ってる
.
.
まだまだです〜
김도영
김도영
でも、ちょっと表情やわらかくなった
.
.
げ、普段そんな硬いです?
김도영
김도영
んー、仕事モードのあなたさんは、ちゃんとしてるから
.
.
それ、褒めてます?
김도영
김도영
もちろん

グラスを傾けるたび、少しずつ言葉が増えていく。
今日の撮影の話。台本のこと。共通のスタッフのこと。

そして、話題がふと“報道のあと”に戻った。
.
.
えー……正直、しばらく誰にも会いたくなかったですㅠㅠ
김도영
김도영
わかる
.
.
どよんさんも?
김도영
김도영
今こうして飲んでるの……けっこう不思議かも
.
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えそれなです
김도영
김도영
声…
.
.
ん?
김도영
김도영
あなたちゃんの声。
ちゃんと聞いたら、全然ちがった
グラスの中のソジュが減っていくほどに、会話の温度は上がっていった。

さっきよりも、彼女の目をちゃんと見られる気がした。
あなたも、声のトーンが少し柔らかくなっていた。
.
.
あなたも〜どよんさんかっこよすぎた
김도영
김도영
あなたちゃん、
あといっぱいだけ、飲も
.
.
うん。1杯だけ…
味のある机の上には既に4本のソジュの瓶。
少し熱を持ち始めた2人の目には映っていなかった。







あなたが目を覚ましたのは、やけに静かな部屋だった。

ん?
カーテン越しにやさしい光が差し込んでいて、
見慣れない天井、知らない部屋、
そして、ベッドの隅には ブランケットと、清潔感ある空気。

えっと、ん?

ガバッと起き上がった瞬間、視界の端に白いTシャツの背中が見えた。
.
.
どこ!
김도영
김도영
…あ、起きた?
おはよー

振り返ったのは、少しだけむくんでてノーセットのドヨンだった。
.
.
ひっっっ!!!!!!
あなたは悲鳴寸前の声を抑えながら、急いでブランケットをかぶった。
김도영
김도영
待って待って、落ち着いて!なにもないから!!
ほんとに!100%なにもないから!!
.
.
あ、服…
着てるやん
김도영
김도영
うん、マジで。昨日、店出たあとけっこう酔ってて、“タクシー怖い〜こわい〜”って泣き出して……。
김도영
김도영
実家も事務所も連絡つかなくて、しょうがなくて。俺んち、スタジオから近いし……
.
.
ごめんなさい…
消えたい…
.
.
ほかに変なこと言ってなかったですか?
김도영
김도영
んー
김도영
김도영
サムギョプサルのにおいの記憶がどーたらって言ってた
.
.
うわぁぁぁぁ

あなたは顔を真っ赤にして、ブランケットに埋もれた。
김도영
김도영
あと…
김도영
김도영
ドヨンさんイケメンすぎるって10回くらい言われた…///
.
.
ぎゃああああああああ!!
.
.
やだやだやだやだやだやだ聞きたくない
ドヨンは吹き出しそうになりながらも、少し照れくさそうに目をそらした。
김도영
김도영
でも、ちゃんとソファで寝かせたし、
タオルケットもかけたし。僕は床で寝たよ。えらくない?
김도영
김도영
褒めてよあなたちゃん
.
.
えらい……っていうか、
なんか……本当に、すみませんでした……
김도영
김도영
ほんとに何もなかったから安心して。…
…ただ、寝顔は、けっこう幸せそうだったよ
.
.
見たんですね😒
김도영
김도영
見たも何も…
離さなかったのそっちじゃん…///
.
.
はい?!?!
無理無理無理
.
.
いや。無理って言うか、その、、なんと言いますか…
김도영
김도영
ふ、ははっ
김도영
김도영
わかったから、着替えな?
あなたちゃん。

あなたはドヨンから借りたオーバーサイズのトレーナーに着替えて、キッチンカウンターに座っていた。
.
.
お詫びといいますか…その、
朝ごはん作らせてください…
김도영
김도영
え。逆にいいの?
なんか、自分自信も落ち着きたくて
김도영
김도영
じゃあ、キッチンどうぞ。冷蔵庫、そこ

慣れない手つきながらも、あなたは卵を割り、ウィンナーを炒め、
トーストを焼いた。
なんてことのない朝食。それでも、ふたり分。

ドヨンはカウンター越しにその様子を見ながら、ふとつぶやく。
김도영
김도영
じょーず、上手。
김도영
김도영
……なんか、こういうの、いいね
김도영
김도영
朝起きて、何事もなかったみたいに“おはよう”って言えるの。ちょっといいなって思った
.
.
…へ?
김도영
김도영
次も、飲みいったら
酔い潰させる。
.
.
うわ…
.
.
そういうのをお持ち帰りって言うんですよ!
김도영
김도영
お持ち帰りって笑笑笑



김도영
김도영
大丈夫。次はちゃんと家に送ってあげるから
頭をポンポンと撫でられる。
変な感覚になって、触られた部分が火傷しそうなくらい燃えている。
.
.
えっ、あ、….え…
김도영
김도영
酔ったらタメ口になるのも。
….なかなか捨てがたいよ
.
.
はぁぁぁぁぁぁぁ///

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