第6話

未来に向かう途中
1,152
2024/08/19 04:23 更新
大森元貴
大森元貴
………
     僕は近くの図書館に来ていた
藤澤涼架
藤澤涼架
あ!大森!
藤澤涼架
藤澤涼架
なーんだやっぱあんたも来てたんだ!
大森元貴
大森元貴
ちょっと藤澤…ちょ…
藤澤涼架
藤澤涼架
残念でした!もうとっくに整理券
大森早苗
大森早苗
____元貴?
大森早苗
大森早苗
あ…すいません
大森元貴
大森元貴
………






藤澤涼架
藤澤涼架
なんで言ってくれなかったの!
大森元貴
大森元貴
黙っててごめん
大森元貴
大森元貴
言うタイミング逃しちゃって
藤澤涼架
藤澤涼架
あの西川文乃がお姉さん!?
藤澤涼架
藤澤涼架
っていうか私、上から目線で偉そうなこといっぱい言っちゃったじゃん
藤澤涼架
藤澤涼架
マニアックとかなんとか はあ…最悪
大森元貴
大森元貴
いやでも実際マニアックだと思うから気にしないで
藤澤涼架
藤澤涼架
でもびっくりした
藤澤涼架
藤澤涼架
すごい美人さんだね
大森元貴
大森元貴
そういうフォローもいらないから…
藤澤涼架
藤澤涼架
お姉さんとゆっくり話してきなよ
大森元貴
大森元貴
でも待ち合わせの時間…
藤澤涼架
藤澤涼架
いいから!
藤澤涼架
藤澤涼架
私、綾華と先に行ってるし
大森元貴
大森元貴
あぁでも…今日の山中に会えてないから
藤澤涼架
藤澤涼架
………
藤澤涼架
藤澤涼架
ねぇ大森、ひょっとして知ってるの?
大森元貴
大森元貴
記憶のことなら、知ってる
藤澤涼架
藤澤涼架
やっぱり…
藤澤涼架
藤澤涼架
公園の日か
藤澤涼架
藤澤涼架
綾華が話したの?
大森元貴
大森元貴
うん
大森元貴
大森元貴
でも僕に話したこと、彼女は日記に残してない
藤澤涼架
藤澤涼架
どうして?
大森元貴
大森元貴
書かないでって頼んだんだ
大森元貴
大森元貴
これまで通り付き合いたかったから
大森元貴
大森元貴
だから今日の山中は
大森元貴
大森元貴
僕が記憶障害を知ってることを、知らない
藤澤涼架
藤澤涼架
……
大森元貴
大森元貴
だから
大森元貴
大森元貴
山中には内緒にしててくれないかな?
藤澤涼架
藤澤涼架
…わかった
大森元貴
大森元貴
___こんな近くでサイン会やってるとは思わなくてびっくりした
大森早苗
大森早苗
出版社の人にどうしてもって言われて断れなくって…
大森早苗
大森早苗
元貴、少し痩せた?
大森元貴
大森元貴
………
大森元貴
大森元貴
すごいね、芥川賞
大森早苗
大森早苗
受賞もしてないのに気が早い
大森早苗
大森早苗
家族を…
大森早苗
大森早苗
元貴を犠牲にしてまでやってきたことだからね
大森元貴
大森元貴
……
大森元貴
大森元貴
僕は
大森元貴
大森元貴
犠牲になんてなってないよ





     母さんを心臓の病気で亡くして







   家のことは全て姉さんがやるようになった






         辛かったあの頃








  姉さんにとって、本の世界が心の拠り所だった








母さんが死んでからも、父さんは小説と向き合い続けた







でも、前みたいに楽しそうに書く父さんではなくなってしまった







       いつからか姉さんは








 そんな父さんに気を遣って、隠れて小説を書き始め








     そして文藝雑誌の新人賞を獲った






    


     いつしか姉さんの書く小説が







     僕の心の拠り所にもなっていった




大森元貴
大森元貴
僕が家事を覚えて
大森元貴
大森元貴
姉さんが小説に打ち込んでくれたことが
大森元貴
大森元貴
誇らしかった
大森元貴
大森元貴
犠牲なんかじゃないよ
大森元貴
大森元貴
だから家を出る時も、後押ししたんだ
大森早苗
大森早苗
……
大森早苗
大森早苗
お父さんは?
大森早苗
大森早苗
元気?
大森元貴
大森元貴
相変わらずだよ
大森元貴
大森元貴
でも、このまま父さんに黙ってるつもり?
大森早苗
大森早苗
賞の結果が出たら話すよ、ちゃんと




大森早苗
大森早苗
それで?
大森早苗
大森早苗
元貴のほうはどうなの?好きな子でもできた?
大森元貴
大森元貴
へ?
大森早苗
大森早苗
わかるわよ
大森元貴
大森元貴
恋人っていうか、友達みたいなものだけど
大森元貴
大森元貴
その子、事故で記憶障害になっててさ
大森元貴
大森元貴
一度寝ると、その日の記憶全部忘れちゃうんだ
大森早苗
大森早苗
……
大森元貴
大森元貴
だから、毎日その日あったことを日記に残してるみたいで
大森元貴
大森元貴
その日記を読み返さないと
大森元貴
大森元貴
僕のことも忘れてしまうんだけど…


大森早苗
大森早苗
__でも
大森早苗
大森早苗
彼女が日記を開けば
大森早苗
大森早苗
そこにいつもあなたがいるのよね?
大森元貴
大森元貴
そう!
大森元貴
大森元貴
だから、日記を楽しいことで埋めて
大森元貴
大森元貴
それを読んだ彼女が毎日少しでも前向きでいてくれたらいいなって…!
大森早苗
大森早苗
元貴に大切な人ができてよかった









大森早苗
大森早苗
__じゃあここで
大森元貴
大森元貴
ありがとう、また


    姉さんはタクシーに乗り込んだ
大森早苗
大森早苗
元貴!





大森早苗
大森早苗
その子のためにも、元気でね
大森元貴
大森元貴
うん
大森元貴
大森元貴
心配しないで…!

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