季節はいつの間にか11月。
ピューっと音を立てて北風が吹いて
今ばら撒いたばかりのチラシが宙に舞う。
屋内を求めていつもの店に駆け込むと、
そこには思ったより大勢がいた。
トガちゃんとトゥワイスに手招きされて
奥の部屋のベッドをのぞき込むと、そこにいたのは
どうやら、店でいつも通り黒霧さんとリーダーが話していたところに
荼毘が来て、ドアを開けるなりぶっ倒れたらしい。
額に載ったタオルをどけて手を当てると
結構な発熱だということが分かった。
いつも生意気な奴が弱ってる姿をバッチリカメラに収めて
コンプレスに言われた通り看病の手伝いをする。
後でグループラインのアイコンにしとこ。(えげつない)
黒霧さんと棚の中を漁ってみたが、風邪薬は見当たらない。
そう言って、私は自分の頬に「ボトル」を当てた。
そして満タンになったところで、ボトルを黒霧さんに手渡す。
ガチャ。
私が買い物に出るのと同時に、黒霧さんは
荼毘の寝ている部屋に戻った。
【三日後】
クラウンもといあなたの本名(苗字) あなたの本名(下の名前)、完全に風邪ひきました!!
風邪をひいてはいるものの、家で一人でいるよりこっちの方が
早く治りそうだと思って店に来た。
絶対そんなこと言ってやらないけどな!
すっかり治ったらしい荼毘も口をはさんでくる。
私の体力返せ、若造。
黒霧さんから風邪薬を受け取ろうと、歩き出したその時。
一歩踏み出すと足がもつれてうまく歩けない。
息があがって、頭も痛くなってきてしまって
視界が、歪んで
__そのまま意識が薄くなっていった。
目を開けると、そこは三日前に荼毘が寝ていた部屋。
顔を覗き込んできたのはトガちゃんとコンプレスだった。
そしてトガちゃんの声を聴いて、ぞろぞろと部屋へ人が入ってくる。
帰ってもよかったのに。
風邪薬を用意しながら黒霧さんは言う。
結構寝てたな、面目ない。
錠剤を二粒口に放り込んで寝転がると
トガちゃんが冷たいタオルを額に乗せた。
頭の痛さがぶり返してきて、もう一度寝ようと布団をかぶりなおす。
目を閉じようとした時、
荼毘に呼ばれて、あまりに珍しかったもので素直に振り向くと
待ち構えていたのはスマホのレンズ。
__さて、次に風邪っぴきになって写真を撮られるのは誰になるやら。
寒さは深まるばかりです。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!