第142話

呪力と個性
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2023/12/09 13:40 更新
体から熱が奪われて言っている訳でもないのに、寒い訳でもないのに

手が震える


足が震える



呪具を上手く持てない





それでも持ち直そうとする私に、原因となるアレは容赦なく突っ込んできて、私の腹に攻撃を入れた



抵抗しようとしても



目の前の情報が邪魔をして



手を出すことが出来ない







なんで、









なんでお母さんが呪霊になっているの?





俺は、いつから選択を間違っていたのだろうか





自分自身、正しいことをしてきているつもりだった



あぶくを守るために、親と表向きの協力をして

汚ぇことだって、あぶくの為だ、五条さん達の為だって我慢してやってきた


そんなんだから、俺は家族なんて繋がりとっくの昔に諦めていた


諦めていた筈だったのに





今目の前で呪霊となって暴れている母さんを前に、悲しさと怒りが湧いてくる


いつもなら躊躇いなく呪霊を相手できるのに


俺は今初めて体が思うように動かないという感覚に陥っている


早く動かないといけないのに、なぜか上手く声が出なくて、目の前の情報が全て嘘のように見えて

手が震えてくる






あぶくがあんな目になっているのに




あぶくが、あぶくに攻撃が向いているのに



俺は今何も出来ずに




佇んでその光景を見ていることしか出来ない





なぜ動けない




なんで動かない?



そんなことを頭で悶々と考えているだけで時間が1秒2秒と進み、その間も呪霊はあぶくに攻撃を入れていた
楠井夜
……やめろ!
楠井夜
母さん!目覚ませ!
声を荒げてそう言ってみるも、母さんはお構い無しにあぶくの相手をする

母さんが父さんと手を組んでるのか、それともとうの昔から母さんは俺と同じように俺らを守る為に父さんの味方の振りをして、その挙句にこのようになっているのか


どっちなのかは分からないが、俺は、目の前で暴れている母さんを助けたいとすら思ってしまう
どうすればいい?



こんな状況で俺が母さんを相手できるのか?


この手が震えてる俺が母さんを祓えるのか?



それに父さんだってまだいる


このままほっておくのはまずい



どうする、




いや!その前に動かなくてはならない






動け!俺!



動けよ!





そんな時、ただ攻撃を受けていただけのあぶくが母さんの蹴りを止めた




手が震える、足が震える




そんな事、雄英に入って今まで何回あっただろうか



初めての戦闘訓練?インターン?潜入捜査?呪霊退治?


数え切れないほどあるんだよね。



怪我をしたところで、相手が強いところで

今までの努力が変わるわけでも、私が私でなくなる訳でもない
今まで身をもって学んできた




だからこそ分かる




そんな状況に陥ったのなら、震えても、緊張しててもなんでもいい


自分のペースに持ち込めたものが勝つ


勝つためには
救うためには
私が私の正義に向き合うしかないんだよ



お母さんの拳がまたもや腹に入り、倒れる寸前、私は咄嗟に受身を取り、跳ね起き飛びで反対側に飛び起き、そのまま手で一回転をし、足でダイレクトにお母さんの肩と首の中間ら辺と、横腹に蹴りを入れた



口に溜まった血を吐き出し、邪魔になった髪の毛を括り直す

お父さん
もう既にボロボロではないか?



半笑いの笑みを浮かべながら、お父さんは勝利を確信したかのように喋りかけてくる



たしかに私は外傷が多く、一見怪我を沢山しているように見えるが、



今までの事件、なんなら五条さん達に稽古つけてもらってた時の方が酷かったし痛かった




顔に着いている何かを拭おうとすると、それが私の頭から出ている血ということに気がついた




頭を触ってみると、どこかのタイミングでぶつけたのか大きめの怪我をしていたらしい



これを見てお父さんは私がボロボロだと思ったんだ
甘く見られてる今がチャンスだ




お母さんはさっきの攻撃からして、やはり特級相当の呪霊となってるんだろう

そして、お兄ちゃんが領域を展開していることから、尖鋭の方の個性がいつ切れてもおかしくない状況


尖鋭とお父さんを気にしながら特級相手か……



上等!






やって見せる






その場でトントンとジャンプをして、深呼吸をした





頭を働かせろ






タイミングを計って、次の攻撃に繋げる最速の手段は?



最善の攻撃は



情報を読み取って、分析しろ




不格好でもいい





ある程度の情報さえ分かれば、記憶が動かしてくれる



それが出来る私は!





何者にでも成れる筈だ!








お父さんはポッケに手を突っ込んでいるから、またメスとかなんか武器の攻撃を予想した方がいい


逆にお母さんはそこまで頭が動いていないというか、見る感じ自我が無いように見えるから、頭を使う攻撃は無いと思っていい



尖鋭は、動きそうになくほうけてるけど、動くのも時間の問題、あと数十分なんかは持たないだろうな




そして何より、お兄ちゃんが動けていないことに驚きもある




まぁそりゃそうだよね



衝撃でかいよね






頭をフル回転させ、今まで見てきた良華先輩や伏黒達、プロヒーロー、同級生のみんながしていた攻撃手段なんかを引用させて情報を処理し次の作戦に繋げる手段を完成させた



そんな時、お父さんのメスが私の頬をかすった
お父さん
こんな場で立ち尽くすとは、お前もまだ場数が足りないんじゃないか?



なにかの気配を感て後ろを振り向くと、いつの間にかやってきたお母さんがいた


咄嗟に高くジャンプをし、お兄ちゃんの真横へと移動した


お父さん
圧倒的にお前が不利な状況だ
お父さん
お前が苦手とする炎系の個性に、特級相当の威力を持つ呪霊
お父さん
どうする?




お父さんの中での私は



赤ちゃんなのだろうか





それとも、まさか




私が雄英に入って、何も変わってないとでも思ってるのだろうか
楠井あぶく
その辺の対処はしてるよ
楠井あぶく
一芸だけじゃ、ヒーローは務まらないからね




走ってお母さんの元へ突っ込み、目の前でジャンプをし、後ろ側に回って後頭部に蹴りを入れたあと、そのまま両手を地面に着け、顔面に卍蹴りをお見舞い


手を押し返して立ち上がったあと、お母さんの足元を掬い、バランスを崩したところで横腹に蹴りを入れるとお母さんは遠くに吹っ飛んだ




後ろから飛んでくるメスをシャボン玉でバリアし、へし折ると、お父さんの元へと向かい、ビー玉を出して叩き割ると、それを足場にしてお父さんの目の前と飛んだ
楠井あぶく
お兄ちゃん!
楠井あぶく
虚像!



我に返った様なお兄ちゃんは何が何だか分からないというような顔のまま、虚像的効果の手の形を作った



虚像的効果が発動された私はその力でお父さんを蹴ると、お父さんはばらまいておいたビー玉の上に吹っ飛び、その衝撃で現れた最高硬度のシャボン玉でまたもや攻撃を受けていた



そんな状況を見て、私はお兄ちゃんの元へと着地した
楠井あぶく
お兄ちゃん。
楠井あぶく
ここまで時間は作れた
楠井あぶく
尖鋭が動く前に終わらせよう
楠井 夜
……そっか
楠井 夜
そーだよな
楠井 夜
わかった
楠井 夜
始めよう




お兄ちゃんは私に五指で触れると、領域を閉じた




打撃を受けたお父さんとお母さんがこちらにのそのそ戻ってきているのを確認し、私たちは目を合わせた




お兄ちゃんは呪具を持ち直し、私はめいいっぱい空気を吸った



そして、私たちの本作戦は、冷たい風と共に幕を上げた
楠井あぶく
領域展開!
楠井 夜
領域展開
楠井あぶく
流々呪個変
楠井 夜
流々個呪変







かつて宮澤良華が使用していた、領域展開 流々呪個変


展開した領域内に存在する呪力を個性と変えることが可能となる


そして、領域展開 流々個呪変

宮澤朔太が使用しており、専用具を地面に突き刺し個性を流すと、呪具の半径一キロ圏内で、展開した者の一部が相手に触れる事で個性が呪力へと変えることが可能となる


楠井夜は宮澤朔太から専用具を受け取っており、領域展開が可能となっている


楠井あぶくは、と言うと

少し前に発見された術式使用を可能とするボタンを地面一体に撒き散らし、それで地面に直接術式の元となるものを流す


同時にスノードームを作り、一気にディスカイズV(ディスカイズMを改良した箱型のもので、あぶくの腕に着いているモニターと連動していて、ボタンひとつでディスカイズMと同じ動きを使用できる)で地面付近だけ温度を変え続けるることで、溜まったビー玉が地面内にある異物質となる術式、呪力を含んで浮上し始める


ビー玉の強度を下げているため、数メートル浮上すると自動で割れ、擬似領域展開が完成される







また、あぶくが領域展開をしている地は、夜が領域展開をしている場所と被る








擬似領域展開となる良華先輩の領域を展開した後、私は腰から呪具を取りだした
普通の刀と変わらないような見た目をしているが、柄の部分になにかの紋章が入っている

誰かの家紋なのか、なにかの象徴となるものなのか、


さっぱり分からないが、この呪具はおじいちゃんに確認を取ってみると、五条さんや良華先輩どころか現呪術界で使える人が誰もいないと言うので有名らしい

五条さんでも使えないようなものがなぜ存在するのか

呪具として機能しないものがなぜ特級呪具として認定されてるのか


謎に包まれている呪具だと言うのは言うまでもない




ただ、先日良華先輩の家に物間のワープ練習で言った時にこれが入っていたであろう黒い箱を見つけた


箱自体はなんの変哲もなく、特に変わった様子がなくて使うためのヒントがなくて使うのを諦めかけた時、箱に入ってる呪具がぴったりハマる梱包の中からカラカラと音がした


梱包を取り外して仲を見てみると、中には呪具の説明書となるような使用書が入っていた






その説明書にはこう書いてあった




【特級呪具 風格継ふうかくつき

術式と個性を同時変換させる際に生まれる“平”の空間でのみ使用可能。平の空間で使用された場合、必中必殺として領域内に存在する個性を全て術式とみなし、術式呪力共に個性とみなす。
また、散華満開を使用することで平の空間を技とし、攻撃に使用する事が可能となる。





今まで五条さんがこれを使えなかったのは、呪術師最強と言われる五条さんでも平の空間を作ることは不可能

勿論朔太さん、良華先輩1人でも平の空間を作ることは不可能で、これを使用するためには朔太さんと良華先輩が同時に領域展開をしている間に使用する必要があった





でも、これは今まで使えなくてよかったのかもしれない



これが使えてしまえば呪術界だけじゃない。個性社会でのパワーバランスが全て崩れる。


ずっとお兄ちゃんと領域展開の練習と一緒にしてきた



散華満開の練習





何が起きたらこれが起こるのか


何が発動条件なのか



最初は頭をひねらせていたものの、少し考えればわかる事だった




平の空間を技として放出するのなら、必ず呪力と個性が必要


ということは必ず私達は何らかの方法で空間に呪力と個性を放出しなければならない



また、私はこの呪具を見つけた時、ひとつの考えが頭をよぎった







呪力を個性に変える朔太さんに、個性を呪力に帰る良華先輩。
元は朔太さんが使用していたが、今は良華先輩が使用している特級呪具ホオズキ






最初は共通点が華なのか、と思っていたけど
よくよく考えたらそれ以上の共通点を見つけて鳥肌が立った













全部













という意味がある






そして、



嘘といえば








虚図嘘






こいつが真っ先に頭に浮かんだ



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