第11話

蛍光色
57
2025/01/17 11:40 更新
次の日。

前日泣きすぎた目はまだ少しだけ腫れてるけど、
昨日よりずっと良くなった。

玄関を開けると、私は体が「く」の字のようになった。
遠藤 百合
燐〜!おっはよ〜!!
可愛い顔してどこにそんな力があるのやら。
飛びついてきた百合によって、
私は体が吹っ飛びそうになった。
笹倉 昴
おはよう燐。
ごめん、百合がいつもの場所じゃなくて
どうしても家まで迎えに行くって聞かなくて…。
黒須 燐
うん…いつものことゴフッゴホッ!
飛びついた状態のまま強く百合に抱きしめられる。
いやこれ抱きしめるって言うより締め付けられてる。
遠藤 百合
今日は燐が教室にきてくれるんだもん!
嬉しくって!
笹倉 昴
ゆ、百合!!
待って燐の顔だんだん紫になってる!!
久々の登校。
僕は無事に教室にたどり着けるんだろうか…。
黒須 燐
ふう………。
遠藤 百合
燐…
さっきから何回もため息ついてるけど、
早く教室入ろうよ…。
黒須 燐
だって!
ずっと教室に来てなかったんだよ!?
久々に入る教室は緊張するでしょ!
って言ってたら目の前で教室のドアが開く。
んー。無慈悲。

緊張で心臓が口からまろびでそうだったが、
すぐに引っ込んだ。
黒木 輝
燐、おはよ。
輝がわざわざお出迎えしてくれた様で、
少しだけほっとした。

輝はいつもの様にクールな顔のまま。
でも仲のいい人ならわかる。
めっちゃ目がキラキラして嬉しそう。
ご主人の帰りを待ってた犬みたいだな…
そんなこと言ったら拗ねるから言わないけど。
遠藤 百合
輝おはよー!
笹倉 昴
おはよう…輝。
黒木 輝
おはよ。
遠藤 百合
ほら、早く入った入った。
あんまり抵抗すると、力自慢の百合に吹き飛ばされそうなので、ゆっくりと教室に入る。

そこにはすでに登校してきた生徒たちがそれぞれ談笑している。

こっそり忍足で入ろうとしていると、1人の声が教室に響いた。




クラスメイト
え、燐だ!
一斉にこちらを向くクラスメイトの目、目、目。

怖い。逃げたい。
けど私のそばには百合も、昴も、輝もいる。
大丈夫だと自分に言い聞かせて深呼吸。
黒須 燐
お、お久しぶりでゅす。
噛んだし。
クラスメイト
え、燐めっちゃ雰囲気変わってる!?
何があったの!?
クラスメイト
というかもう学校来て大丈夫?
かなり休んでたけど体調悪かったの?
クラスメイト
俺よりイケメンじゃん!
ワックス何使ってんの?






黒須 燐
だーーーーっ!
一斉に喋るんじゃねえ!
クラスメイト
あ、いつもの燐だ。
そこからはクラスメイトたちの質問責め。

なんで休んでたとか、なんで髪切ったのとか、なんでスカートじゃないのとか、ワックス何とか。

というか最後のはどうでも良いだろ。
もっと他に聞くことなかったんか。
クラスメイト
そっかあ。燐は女子でも男子でもないと。
クラスメイト
え、じゃあ女子が好きってこと?
黒須 燐
いや、俺は女子だろうが男子だろうがあまり気にしてないというか、好きになる性別はあまり関係ないって言うか…。
クラスメイト
俺?いま俺って言った?
黒須 燐
あー。その時で一人称変わるから…
あんまり気にしないで。
クラスメイト
体育の時とかどうすんの?
黒須 燐
体は女だから一応女子で参加する。
一つ一つの質問がちくり。
みんな悪気はないんだろうけど、
自分にとっては少しだけモヤモヤする内容で、
なんと言うか…息苦しい。
クラスメイト
え、ていうかさあ。



クラスメイト
女も恋愛対象でしょ?
更衣室とかトイレとかどうするの?
クラスメイト
確かにー。そこどうなんだろ?
クラスメイト
心が男ならともかく、
どっちでもないんでしょ?
どうすんだろ。





クラスメイトたちの声が頭の中で響く。


あれ?
今なんか周りが歪んで見える。

答えなきゃ、そう思ってるのにうまく言葉が出てこない。

と言うか、なんで私今までクラスのみんなに自分の事を隠してたんだっけ?



あ、そっか。


こういうこと・ ・ ・ ・ ・ ・か。
黒須 燐
うっ…。
遠藤 百合
燐!?
笹倉 昴
気持ち悪い?大丈夫?
黒木 輝
燐。
気持ち悪さを押し込めながら輝の方を見ると、
輝はクールな顔のまま。
でも、僕ならわかる。

すっごく心配してる、真剣な顔だ。
黒木 輝
燐。無理は良くない。
教室でよう。部室行こう。
返事もろくにできないまま、
私は輝に支えられながら教室を後にした。

そうだ、こう言うことだ。

今まで通りには接してもらえない。

どこまでも僕は、みんなと違う色なんだ。

ただ、男と女と、どっちでもない自分。
それだけ。それだけなのに。
普通に接して欲しいのに、どうしても好奇の目を向けられる。
悪意なら跳ね除けられる。
そんなの勘違いだ、気持ち悪いとか。
でもみんなは、
特別なんだから受け入れなきゃ!
と悪意なき言葉で僕を刺す。






僕はこれが怖かったんだ。

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