第12話

消しゴム
27
2025/10/22 10:28 更新
輝に支えられながら訪れた部室。
百合と昴も着いてきてくれたようで、百合が私と輝の代わりに部室のドアを開けてくれた。

遠藤 百合
失礼しまーす。
三笠 桐也
ん?百合くん?……ああ、なるほど。
村雨 雷
え、燐!?大丈夫!?
笹倉 昴
教室で具合悪くなっちゃったから、連れてきたんだ。
村雨 雷
昴、教室で何があったの?
三笠 桐也
こらこら雷。そんな殺気に満ちた顔をするな。
百合や昴。輝。迎えてくれた部長と私を心配して怒る雷の顔や声が、込み上げていた吐き気をすうっと鎮めたと同時に、今度は別の感情が込み上げる。
黒須 燐
ひっ…うぐっ、うっ、うわああぁん!
つい昨日泣いてしまったばかりだと言うのに、
私はまたみんなの前で子供のように泣いた。
笹倉 昴
っていう感じで。
クラスのみんなも受け入れようとしてるから
強くは言えないし、でも燐は辛いみたいだし…。
三笠 桐也
ありがとう昴くん。説明してくれて。
村雨 雷
本当に昴がいて良かった。
輝は言葉足らずだし、遠藤さんは擬音ばかりで分かりにくいし…。
遠藤 百合
うっ…。
黒木 輝
…俺、なんか変だった?
泣きじゃくって話せない私の代わりに、昴が教室での出来事を話してくれた。

桐也部長は演劇部の部長と仲が良いみたいで、
百合と昴とは顔を合わせた事があるらしく、
雷は前に聞いていた通り、昴と仲が良いらしい。

そのせいか、私のことを話すだけでコントのようなボケとツッコミが飛び交う会話で、私はすっかり落ち着きを取り戻した。
村雨 雷
燐、落ち着いた?
黒須 燐
うん…みんな、ごめんね。
遠藤 百合
ううん。燐は凄いよ。
ちゃんと教室に来てみんなと
向き合おうとしたんだもん。
黒須 燐
でも、また逃げた。
いつもそうだ。逃げて、逃げて。
逃げている自分が嫌になって、そんな自分からも逃げる。
本当にどうしようもない。

俯き、また涙が滲む視界に、桐也部長の美少女フェイス…いや、男性なのだから美少年フェイスかな。
私の顔を覗き込むようにしゃがみ込んだ部長の顔は、
見たこともないくらい優しい顔をしていた。
三笠 桐也
でも、向き合おうとしたんだろう?
黒須 燐
…逃げちゃいましたよ、また、あの時みたいに。
三笠 桐也
今はまだ、
向き合うのに時間が必要だというだけだろう?
それは逃げじゃない。よく頑張ったな。
そう言って部長は僕の頭を優しく撫でた。
暖かくて、優しくて、自然と口元が緩む。
村雨 雷
………頭撫でてる……。
雷がなぜかすごく拗ねた顔してこちらを見てる。

え、なに?
黒須 燐
部長、雷のことも撫でてあげてください、拗ねてるんで。
三笠 桐也
ん?なんだ雷も撫でられたかったのか。
村雨 雷
違っ…!そうじゃねえよ!
初めて聞いた雷の男っぽい口調に、なぜかときめいてる自分がいた。

なんか……良いな。
黒須 燐
なんか……良いな。
黒木 輝
燐、心の声出てるよ。
遠藤 百合
ふふ…良かった…。
百合が優しい女神のような顔で僕を見つめてくれた。
遠藤 百合
燐の居場所がちゃんとあって。でもあれだからね、私も昴も、燐の居場所だからね。
そう言ってまた頭を撫でられた。

静かに涙が頬を伝う。

あんなに辛かったのに、辛い気持ちはいつの間にか消えていた。


















村雨 雷
また…頭撫でてる……。

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