第212話

どこまでも深い深淵に 一気見
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2024/11/25 08:49 更新























猿はいつまでも猿なん?



































あんさんなんて...



































大っ嫌いや




















〜rbr視点〜
朝起きて準備し、朝ごはんを食べて家を出る。
隣の家のゾムが来るのを待つと
今日は思いの外早かった。
zm「ロボロ〜!」
rbr「ゾムー!!!」
zm「あれ〜?声は聞こえるのに見えへんわ〜?w」
rbr「前見ろ前を!」
zm「wwww」
なんやねんもぉ。
二人で喋りながら登校していると学校に着いた。
我々小学校、小中一貫の私立の学校だ。
ゾムは成績は余り良くはないが運動が出来る。
逆に僕は基本運動よりも勉強の方ができる。
色々とゾムとは違うところがあるけど
幼馴染のせいか、基本一緒にいる。
??「ロボ太〜!!!」
突然後ろから掛かる大きな声に肩を揺らす。
後ろを振り向くと予想通りの人がいた。
rbr「兄さん!」
zm「相変わらず
ロボロの兄さんめっちゃ声でかいなw」
rbr「まぁ兄さんだからね」
ゾムは呆れているが
お前も大概、声でかいと思う。
pn「ロボ太!お弁当忘れてるよ?」
rbr「あれ?そうだっけ?」
ランドセルを確認すると兄さんの言う通り、
お弁当がなかった。
pn「今日お兄ちゃんが起きるの遅かったから
ごめんね?」
rbr「兄さんは悪くないよ!ありがとう!」
pn「それじゃ、俺着いてい...」
sn「ぺいんとさぁん!仕事の時間ですよ!」
後ろから話しかけて来たのはしにーねぇさん。
仕事が同じ警官だから
普段から良く一緒に行っているのだ。
pn「うっ、でも」
sn「でも、じゃない!仕事遅れますよ?!」
pn「ロボ太ぁ〜」
rbr「兄さん仕事行っておいで?」
pn「ロボ太がそう言うなら...」
sn「ほら!ぺいんとさん!」
pn「ロボ太!仕事行ってくるね〜?
気をつけて登下校するんだよ?」
rbr「もう分かったから兄さん!いってらっしゃい!」
そういうと
ずるずるとしにーねぇさんに
引き摺られながら仕事に向かっていった。
zm「ほwんwまw相変わらずやなwww」
rbr「うっさいわ!」
とはいえいつもの光景なのは事実だし
なんならもう慣れてる。
まぁ多少過保護だとは思うが。
教室に入ると既にトントンがいた。
zm「お〜トントン!」
rbr「相変わらず早いなぁ」
tn「二人こそいっつも一緒におるよな?」
rbr「そう?」
zm「そうでもないよな?」
tn「いやマジずっと一緒におるてw」
rbr「はぇ〜知らんかった」
鬱の席の後ろ、
ゾムの隣、
トントンの前の席に
ランドセルを置いて
教科書やノートをを机の中に入れる。
弁当はランドセルに入れたまま
後ろのロッカーにしまった。
そのままトントンとゾムと話しながら
他のメンツが来るのを待っていた。

その後コネシマがチャイムの5分前に来て、
鬱がチャイムが鳴ると同時に駆け込んできた。
ut「ギリセーフ!」
rd「遅刻だぞ〜鬱〜」
ut「えぇ?!セーフでしょ!」
rd「アウトだ〜」
zm「あればアウトやな」
rbr「大先生また遅刻してるやんw」
tn「ほんまちゃんと早起きせーへんな」
初日に眼鏡キャラで行く!
って言っていた鬱はどこにいったのか。
もはや見る影もない。
そもそもそんなのおらんかったか。
ut「やられたわ〜」
zm「大先生が来るの遅いからやろw」
tn「はぇ〜どっちが悪いんですかねぇ〜?」
rbr「もっと早く来ればええやん」
ut「だって
昨日徹夜で今日の宿題やったんやで?!」
rbr「それが原因やんw」
tn「計画的にやれば
普通に終わる量ですけどねぇ〜」
rd「はぁいそこうるさい!
鬱はちゃんと寝なさ〜い」
そうらだお先生が言うと
どっと教室が笑いに満ちた。
ut「ヒドイ!」
大先生がわざと高い声でそう叫んだせいで
余計に笑いが止まらない。
rd「取り敢えず朝礼が終わったら
鬱が言った通り宿題提出しろよ〜」
そう言って朝の会が終わった。
zm「ロボロ〜出しに行こ!」
rbr「あ、ちょい待ってや〜」
机の中に入れた宿題を取り出す。
算数ドリルなんて滅びればええんや。
rbr「今回のやつ
めっちゃめんどくさかったわ〜」
zm「ふーん俺は正答率75パーセントだぜ」
rbr「僕は一問ミスで〜す。
いぇーい勝った〜!」
zm「クッソ〜負けたw
でも社会のこの間のテスト俺満点やし〜?」
rbr「社会はゾム強いんやもん!
それ以外だと俺が勝ってるし〜?」
zm「それだったら
俺ロボロより運動出来るわ!」
rbr「勉強は俺の方が上やし!」
rd「二人とも
取り敢えず先に宿題出してくれない?」
ぱっと声のした方を見ると
教卓の目の前で張り合いをしていた。
rbr「あ、は〜い」
zm「しゃーねぇーな。
渡してやるわ、はい、猿」
rd「はーい猿いわな〜い」
zm「じゃあはい、MONKEY」
rbr「無駄に発音いいやんwwwww」
rd「ゾム〜?」
zm「しゃーないわ!じゃあらだお!」
rd「らだおせ、ん、せ、い、な〜?
ゾムと違ってロボ太は優しいから
そんなこと言わないもんな〜?」
rbr「すまん、聞いてなかったわ猿」
rd「え?」
zmrb「「wwwww」」
rbr「ゾム準備しにくで〜」
zm「あ、待てや〜」
そう言って一時間目の準備をしに
机に戻った。
tn「あ、戻って来た」
rbr「トントン、一時間目何やったっけ?」
tn「あれ?理科やろ?」
kn「国語ちゃうんか?!」
zm「ロボロ、前に書いてあるで」
rbr「あ、せやった」
言われた通り授業を確認しに行く。
rbr「理科やったわ〜」
なんとなく
俺は、こういう日が案外好きだったりする。

kn「ゾムー!!!ロボロー!!!!」
rbr「うるさw」
zm「鼓膜破れるわw」
ゾムと笑いながら
トントンとコネシマ、鬱のところに
一緒に行く。
校庭に先に行っていた
三人にボールを持って行く。
rbr「持って来たで〜」
zm「ドッチ鬼やろうや〜」
tn「じゃあ誰が鬼やるん?」
kn「鬼決めでええやろ!」
ut「じゃあやるでー」
全員片足を出して円になる。
「おーにーきめ
おーにーきめ
おにさんだぁれ!」
言葉に合わせて足を指を指して行く。
zm「ロボロ鬼〜!」
kn「ロボロかぁ!!!」
rbr「僕〜?」
ut「ロボロ負けたやんww」
tn「じゃあ10秒数えてや」
目を閉じて10秒数える。
rbr「いぃち!
にぃい!
さぁん!
しぃい!
ごぉお!
ろぉく!
しぃち!
はぁち!
きゅう!
じゅう!
よっしゃ、やったるで〜」
ぱっと見ると
一番近くの木の影に
鬱が隠れているのが見えた。
静かに死角になるように動いて後ろから
rbr「みーつけた!!」
ut「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
背中に思いっきりボールを当てる。
rbr「あっはは!ばぁぁか大先生!」
大先生が鬼になったので急いで逃げる。
後ろから追いかけてくるので
他のやつのところに擦り付けに行かなきゃ。
rbr「あ〜!トントーン!」
tn「こっちにくんなやぁ〜」
ut「おま、すばしっこすぎるやろ?!
ホビットは足まで速いんか?」
rbr「うるせぇぇぇ!!」
大先生、僕、トントンの順番で
鬼ごっこが始まる。
zm「あ、ちすちす」
人の波に隠れていたゾムが
こっちに近づいてくる。
こいつ絶対煽りに来てるやろ!
ut「ん〜、せい!」
rbr「うぉ?!危なぁ」
後ろから飛んできたボールを咄嗟に避けると
トントンの肩に当たった。
rbrutzm「「「あ、」」」
rbr「ヤバいやつにあったってもうた!」
zm「逃げろ〜!」
ut「トットンチ?一旦落ち着こ?」
そう言いながら各自全速力でら逃げて行く。
無言で追いかけてくるトントンが怖い。
ut「あ!シッマ!」
kn「おま!着いてくんなや!!!!」
こうなったらほとんど大乱闘だ。
ボールをギリギリで避けながら逃げて行く。
何回かトントンが鬱にボールを投げた後、
流れ玉がこっちに飛んできて当たってしまった。
rbr「はぁぁぁ?!」
体にあたって校舎の方に
飛んでいってしまったボールを追いかける。
少し騒めきから遠のいた場所に落ちていた
ボールを拾うと、
目の前に神社のようなものがあった。
神社というよりは祠に近いだろうか。
rbr「なんかここ曰く付きやったっけ?」
なんとなく嫌な予感がしたような気もしたが
取り敢えずは
楽してるゾムを鬼にさせなければと
校庭の方に走っていった。

放課後になって
教室掃除担当の班だった
俺とトントンは話しながら箒で床を掃いていた。
tn「そういや最近
あそこの祠の七不思議が噂になっとるよな」
rbr「祠?校庭脇にあるやつ?」
昼に見たあの不気味な祠のことだろうか。
少し薄暗く、
夏にしてはやけに涼しげで気味が悪かった。
tn「あー多分それやと思うわ」
rbr「あ〜あれあんま好きやないんよな」
tn「分かるわ〜できるだけ行きたくないわな」
rbr「どういう噂なん?」
こういう話は嫌いではない、
というよりは寧ろ聞くだけなら面白い。
tn「知らん?
一人を犠牲になんでも願いが叶うんやて」
rbr「めっちゃ怖いやん!」
tn「ほんまな」
rbr「でもあいつらなら行きそうやけど」
tn「確かにw」
机を前や後ろに運んで元に戻す。
「お〜い豚平!ロボ太!ゴミ捨て〜!」
rbr「今行くわ〜」
掃除が終わると教室の入り口近くにある
ゴミ箱の中身を捨てなければならない。
「俺昨日やったからお前らでやれや〜」
tn「せやな」
「「「最初はグー、ジャンケン、ぽん!」
rbr「えぇ僕〜?」
tn「ロボロwお疲れw」
rbr「はぁしゃーないわ行ってくる〜」
ゴミ箱を片手に階段を降りて
大きなゴミ捨て場に向かっていった。


〜tn視点〜
掃除はゴミ捨ても含め終わって、
全員で反省会を適当にやって
ようやく終わるのだが、
ゾムとか鬱は途中で
別のクラスのやつと話したりナンパするから
なかなか帰ってこないのは分かる。
でもロボロが帰ってくるのが遅いのは初めてだ。
rd「ロボ太帰ってくるの遅いから
先帰ってていいぞ〜」
「ありがとう、らだお先生!」
「さよなら〜」
他の二人が帰ってしまった。
tn「らだお先生、
ロボロ見てきていいですか?」
rd「帰らなくていいのか?」
tn「ロボロと一緒に帰るので」
rd「じゃあ早く帰れよ」
tn「はーい!」
嫌な予感がのしかかって足が重い。
心なしか視界が暗くなっている。
急いでロボロのランドセルを持って
自分のランドセルを背負って
ロボロの行ったであろうゴミ捨て場に向かった。
さっき話した祠の前を通って
学校裏のゴミ捨て場に着く。
案の定誰もいないし、
来る途中にロボロがいた様子もない。
tn「ほんまあいつどこ行ったん?」
少し戻ると祠の鳥居の前にロボロがいた。
安堵して駆け寄りながら叫ぶ。
tn「ロボロ、ほんま何やっとんねん!
早よ帰るで!」
話しかけてもロボロが一向に振り向かない。
また嫌な予感がする。
ただでさえ不気味なのに無反応なロボロ。
自分のとロボロのランドセルを放り投げて走る。
ダメや、その鳥居をくぐったら!

tn「ロボロ!!!!!」
ロボロが一歩、鳥居をくぐった。
ほんの一瞬、瞬きの間にロボロが消えた。
一呼吸置いて到着した俺の足元には、
ロボロであろうモノが置いてあった。
tn「あぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!」
間に合わなかった!
ダメだと分かったのに!
ロボロが!
ロボロが!
『rbr「どういう噂なん?」
tn「知らん?
一人を犠牲になんでも願いが叶うんやて」』
誰かの願いの犠牲に!!
tn「あぁぁ...」
ロボロ、ロボロ...
俺のせいやっ...


〜rbr視点〜
ぼんやりと意識が浮上する。
ここは?
あぁそうか、『また』繰り返したのか。
ん?またってなんだ?
自分でもよく分からない思考に追いつかない。
目を開けると真っ暗い海の底の様な、
光の一筋も通らない、
『闇』の体現の様な場所だった。
自然と体は上を向いていて、
水中から見る湖面は
不思議とスクリーンの様になっていた。
トントンが叫んでいるのが分かる。
そんなに騒がなくてもいいのに。
迷惑かけてまうで?
そう思っても声は掛けられない。
きっと『オレ』を持っているのだろう。
屈んで何かを抱きしめる様な体勢になっている。
それでも腕を動かそうとする。
そこでようやく気づく、
手が、動かない。
全く、1ミリも。
力が入っている感覚もないから
神経が切れているみたいだ。
ここに来る前のことを思い出す。
ゴミ捨て場に行って、ゴミを捨てて、
教室に帰ろうとした。
目の前の祠を見てトントンの話を思い出して、
少し気になって近づいた、気がする。
足は重くて
自分の意思で動かせようにもなかった、ような。
後ろから
トントンの叫び声が聞こえたような気もして、
振り向こうにも振り向けなくて、
気づいたら鳥居をくぐっていた。
その瞬間、足元に穴が空いたような感覚がして、
吸い込まれるように声のひとつも出せずに
ここに来た、と思う。
気のせいでなければ。
まだ足は辛うじて動くようで、
少し動かしてみたが泥に足が取られるようで
もったりとしている。
これじゃあどうしようもないな。
力を抜き、ゆっくりと闇の底に沈んでいく。
ぼうっと湖面を眺めていると
ゾムたちが来ていることに気づいた。
声は聞こえないから
何を話しているのか分からない。
それでも何か焦っているのは分かる。
何に焦っているのだろうか。
そう思っていると急にスクリーンが動いた。
rbr「おわっ」
声がくぐもって耳を塞いだ時みたいだ。
『オレ』が持ち上げられているようだ。
何が起きているのか。
どこか他人事のように眺めて闇に溶け込み始めていた。


〜rd視点〜
ゾワっと嫌な予感がする。
rd「なんで?!」
宿直室の中で急に立ち上がる。
一緒にいた
国語の先生、高嶋先生がこちらを向く。
「どうしたんですか?らだお先生」
rd「あ、いやっ」
やばいやばい!
これやばいやつじゃん!
どくんと心臓が波打つ感覚がする。
呪いが、鬼が!
解き放たれる!
rd「ぐっ...は、はやく!帰ってください!」
「え?大丈夫ですか?」
rd「はやくっ!」
その瞬間、自分の意識の先で動け、
という命令が勝手に体を支配する。
部屋は、真っ赤な鮮血で満ちて、
青いジャージも、所々濡れてしまった。


rd「あぁ」
始まる、始まってしまう、地獄が。
猿山家は代々この学校に勤めている教師の一族。
それもそのはず、
ここには呪いの受け皿が必要だったから。
呪いは誰かの願いを受けた時、
または十年に一度、始まる。
これはもう、どうしようもない。
もう五年近くここに勤めていたが
今まで一回もなかった。
最近の噂のせいだろう。
あながち間違ってはいない。
正しくは、誰かの願いを叶える代償に
俺が一時的に人殺しになる、
ただ、それだけだから。
だからこうなったら先生も含め
すぐに帰宅することになっている。
理性を保って非常ボタンを押す。
バタバタと職員室から音が聞こえる。
あれ?
少しは理性が働く気がする。
今までは第三者のような感覚で
どうしようもなかったのに。
これなら、少しくらい抵抗できるかな?
真っ暗な暗闇に一筋の光が差した気がした。


〜rbr視点〜
真っ暗な闇にただ沈み続けて、
手足が麻痺していた時、
ふっと手足が軽くなった気がした。
体もこれ以上沈むこともなくなって、
遠くに見えるスクリーンが
動いているのが分かる。
だんだんスクリーンに近づいていって、
3Dメガネを掛けたみたいになった。
自分の姿も変わったようで、
鬼によって自力で動いているみたいだ。
窓に反射して見えた自分の見た目も
先生みたいになっている。
そうなってからは刀で人を斬り始めた。
しかも声も聞こえてくるようになった。
zm「うわ!!」
ut「ぎゃあ!」
tn「おわっ」
kn「うわぁぁぁ!!!!」
劈くような悲鳴が闇の中反響する。
これを自分でやっているのだから最悪だ。
相変わらず第三者のような視点だけど
感覚だけリアルになったような、そんな感じ。
こんなことは前は無かったんだけどな。
ずっと泥沼に呑まれながら
体は人を殺す感覚だけを覚えていた。
気持ち悪くて、吐きそうで、
思い出した瞬間トイレに篭った。
むかむかと
胸の中を掻き乱されたようで心地が悪かった。
それだからか、
どうしてか鬼の様な恰好をした先生が
あんなに僕のために叫んでくれた
トントンを斬り殺しても、
幼馴染のゾムを追い詰めて斬り倒しても、
嫌いになれなかった。
それどころか、頑張れ、なんて思ってしまう。
自分でも何故だか分からない。
人を殺しているのに、
頑張れ、だなんて正気の沙汰とも思えないが
むしろ今更、とも言えるか。
暗闇の中、静かに嗤う。
自分に、鬼に。
しばらくして、
みんなの悲鳴にも恨み声にも慣れてしまった頃。
ぼうっと何をするでもなく
ただスクリーンを見つめていた頃。
これが徒然なるままにかぁなんて思っては
またどうでもいいことを考えて暇になる。
そんな時、ゾムが何か珠を取り出した。
緑色の、
吸い込まれそうな程に透明で、
光を吸収し、虹色に煌めく宝石のようなもの。
美しいそれを、嫌いだと思った。
いや、嫌いなんてものでもない。
嫌悪、憤怒、憎しみ、苛立ち、憎悪...
言い表しようのない負の感情が襲う。
それに合わせて闇も蠢いて、
体が揺れる感覚がする。
それと同時に
手足の感覚が、視覚が、聴覚が、
吸い込まれるように戻ってくる。
視界も白んで最後に鼓動が戻ってきた。


zm「えっ、、、?」
その声で目を覚ます。
階段の前の廊下でぶつけられたのか、
目の前にはゾムがいた。
あの、俺を鬼にした奴が。
rbr「え?」
kn「え?」
なんやこれ、カエルの合唱かなにかか。
kn「ロボロ戻ったんか!」
手に人を殺した感触が残る。
周りにいないのは鬱と兄さんか。
その二人の血だろう。
tn「元に戻ったロボロ!」
ちゃんと全部覚えてる。
人を殺した感覚も、
お前らの絶望感に溢れた叫びも。
それでも、
rbr「お前らどうしたんや?」
知らないふりした方がええやろ?
kn「お前じゃい!」
rbr「え、、、?」
kn「お前さっき俺らを斬り回してんぞ?」
rbr「え?」
kn「いやでもええよ。
お前が戻ってきたなら。
それで俺は嬉しい」
tn「ようやく元に戻ったな!
お前のランタンな」
トントンがそう言ってランタンを渡してくる。
光に反射してきらりとトントンの瞳が光る。
目が潤んでいたから誤魔化しているのだろう。
そこまで気に負わなくてもいいのに。
rbr「なにこれ?話がついていけへん...」
kn「お前の兄さんを迎えに行こう!」
rbr「海斗兄さんが?!」
んふ、
これだから子供は騙されやすいんだよなぁ。
その後、兄さんを助けて、
色々と脱出のための手立てをしていると
あの館の執事が現れた。
思わずびくりと
肩が震えてしまったがバレてないといい。
そうして
らだお先生に呪いを押し付けることになった。
何故か、
また自分に押し付けられるわけでもないのに、
嫌な汗が背中を伝った。
鬼ヶ島を持った兄さんが死んで、
コネシマが再び鬼ヶ島を持つ。
それを見るだけで声が震えてしまいそうだ。
kn「あれ?死なへん?!」
っ...
ついに対峙してしまった。
死なないでくれっ。
自分でもなんでそう思ったか分からない。
kn「やったんちゃうか?!やったんちゃうか!」
rbr「ぁ...」
目の前に大きな真っ黒い穴がぽっかりと開く。
俺が吸い込まれた時のような、あの穴。
気づいたらその穴に走り出していた。
rbr「先生!!!」
それでも穴は俺を拒んだ。
入れない!
先生が、一人になってしまう!
急げ急げ!
脇目も振らず、
周りの静止も、
呼びかけも無視して、
ただ、あの場所に向かって走って行った。
眼鏡が外れてレンズが粉々に割れる。
靴も邪魔で足の痛みも無視して放り投げた。
先生、先生っ!
もし、もう一度会えるのならっ
先生と話せるのならっ
rbr「俺も鬼にしやがれクソ野郎!!!!!」
そう叫びながら再び鳥居をくぐる。
また、あの闇の中に行くのかと思った。
それでも怖くなかった。
諦めてもいなかった。
一人だけの悪役も、
バッドエンドも、
そんなものはいらないから。


〜rd視点〜
どこかセンチメンタルになっている。
結局いつかはこうなるのだと分かっていたから。
猿山家の長男は
齢十になると一度、呪いを受け継ぐ。
呪いは
四十過ぎる頃までに受け継がなければ死ぬし、
死んだらまた生贄を差し出し、
儀式をしてようやく共に戻る。
俺は一応妻はいるし、子供もいる。
そのことを妻は知っているが、
子供はまだ四歳だ。
受け継ぐのにも、理解するのにも、
精神面で問題がある。
それなのに俺はもう三十五だ。
間に合わないのは分かりきっている。
そうなれば分家に託すしかない。
分家にはできるだけ迷惑はかけたくないのだ。
猿山家の分家は桃瀬、戌亥、鳥井、天乃。
正確に言えば桃瀬が本家なのだが、
鬼から守るために
俺が本家ということになっている。
桃太郎という童話がある。
それはあながち間違っていない。
桃太郎 桃瀬
猿 猿山家
犬 戌亥
雉 鳥井
そしてもう一人、
童話からも隠さなければならない人物、
全てを解決させた、神とも言える存在。
天の声 天乃
天乃も同様、
鬼から守るために俺の分家になってもらった。
そして、俺が四十になれば、
精神面で強く、制御のできる、
いわば
力のある血を持つものから受け継ぐことになる。
つまり、天乃、ロボ太。
そんなのはダメだ。
そうでなくても次は豚平だ。
戌亥は子供がいないし、
豚平の次は希。
呪いなんて教え子に押し付けられるわけがない。
だから、俺がこのまま、体を代償に鬼を抑え込めれば。
大丈夫ダカラ...
rbr「先生っ!!!!!」
闇の中に急にロボ太が飛び込んできた。
急に周りが一転し、
真っ黒い空間になった。
泥のような水中ではなく、地面のある空間。
rd「っロボ太?!」
rbr「なぁに一人で墜ちとんねん!
頭まで猿になったんか?!」
rd「な、なんでここに?」
rbr「一人でバッドエンドなんて
ただただ王道を行く、
そんなんがおもろいと思っとんのか」
こちらの胸ぐらを掴んで真っ直ぐ見てくる。
あぁ、本気だ。
rd「ロボ太、ダメだよ」
rbr「はぁぁぁぁぁ?!
ダメとかなんなん?!
もしかして呪いのこといっとるん?!
んなの分かっててきとるに決まっとるやろ!」
rd「そ、それは」
なんだ、こんな、大人のようなロボ太...
rbr「一つ言うけど
俺は一回呪いを受けてるんや!」
どう言うことだ?
呪いを...?
rbr「一度死んで怖いもんはあるか!
俺はゾムに呪いを押し付けられたし、
そのまま置いてけぼりにされた!
それでも良かったし、むしろ嬉しかった!
俺だけが犠牲になるんやったら全然良かった!
でも!
先生が犠牲になるって言うんやったら
最後まで悪者でいろや!
なんやあの顔は!
それじゃ...
それじゃあここに来るしかないやんか...」
rd「ロボ太...」
確かに孝之に殺された時、安心した。
真横にいたからロボ太には見えたのだろうか。
rd「ごめん、ごめんなぁ...」
足元で泣いているロボ太の頭をさらりと撫でた。
久しぶりに人の生きる温度を感じた気がした。
rd「ロボ太」
ロボ太が泣き止んで
落ち着いてきた頃に話しかける。
rbr「なんや...」
それでも不貞腐れているのか、機嫌が悪い。
rd「後は先生に任せろ。
こんくらいしないと立つ瀬が無い」
そういうとロボ太の目が大きく見開く。
rd「ロボ太が
どんな経験をしたかは分からないけどさ、
鬼になって、
みんなが逃げ切れて
良かったって思ったんでしょ?
それじゃあ俺も同じ。
ロボ太も含め、全員が逃げ切って欲しい。
教え子を守る義務を果たしたいからさ」
rbr「...」
rd「だからロボ太、そのまま戻って...」
rbr「はぁぁぁぁぁ???
かっこつけんなや!
それで俺がいいって言うわけないやろ!
アホか!
いや、猿やったわ」
rd「え、先生傷つくよ?」
rbr「言ったやん!
なんで一人で背負うんや?!
二人で背負ったらええやん!
少しは頼れや!」
急に視界が真っ白になった。
ふたりで?
そんなこと考えもしなかった。
だって俺が受け継がなきゃいけないし、
ロボ太たちには任せたくない。
でも、
でももし、
ロボ太は呪いを受けたことがあって、
精神面で強いのだとしたら、
今回みたいに
理性が残っていた時のようになれるのだとしたら、
それは...
rbr「重すぎた荷物は俺も持つで?」
rd「ロボ太、どうなるか分からないよ?」
rbr「どうせ
俺もこの学校の先生になるつもりだし」
rd「へ?」
rbr「あと、
桃太郎についても、全部知っとるから」
口角が上がっていくのが自分でもわかる。
でもしょうがないじゃん?
可愛いんだもん。
rd「ロボ太〜!このこの〜」
肘で突くとやめろっと言って抵抗してくる。
ありがとう。
rbr「も、もう行くで!」
rd「あ、ちょっと待って〜」
ほんとかわいいんだから。
rbr「待たんわ!」
まぁロボ太がいるなら安心かな?
二人で真っ赤な不気味な扉を潜る。
それでも少しも不安にはならなかった。
一人で背負うよりも二人で持った方が軽くなる。
生徒にそんなこと教えられるとはなぁ。
やっぱり
どこか天の声の子孫とはどこか違うのかもな。

呪いは二人のことを絡めとって、
引き離すことを許さなかった。
重たく、
粘り強く、
しつこく、
足を取り、
転ばせようとしてくる。
それでも二人は良かった。
支え合えばいい、
二人で生きればいい。
また発現したら二人で殺し合えばいい。
誰にも迷惑なんてかけない。
そう誓った。


呪いというどこまでも深い深淵に、
二人で飛び込もう

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