金木犀
それは、9月中旬から10月下旬頃に咲く秋の花。
9月に一度花を咲かせ、10月に再び花開くなんていう、二度咲きする樹もあるんだとか。
『冬の金木犀』
私がこのタイトルに込めたのは、冬の険しい寒さの中であっても何度も咲く花の気高さ…
周りに左右されず自分のペースで自分らしさを保ち、誇る姿。
花言葉にもある、「謙虚」や「気高い人」、そして………
「真実」____
映画制作が決定してもうしばらく経つ。
メイン登場人物である森川楓を演じる佐久間さんも、明日クランクアップを迎える。
長いようで、短い制作期間。
この期間で私は執筆以外の仕事を数多くこなした。
公開決定という情報が世に広がっていった際には、元メンバーの人たちが祝いの品とメッセージをくれた。
もうほとんど関わりがなかったから、驚愕した。
でも、とても嬉しかった。
まだ私のことを忘れず、思ってくれていたという事実に歓喜した。
中原さんが見せてくれたスマホの液晶画面には、佐久間さんの呟きが大量にあった。
「最近小説にハマった!!初級はアニメの小説から読む!!(^^)」
「今日この本買ってきた。タイトルが面白そうで惹かれたから!仕事の合間に読む!」
「そろそろ中級にいくわ!!これとかいいんじゃない!?」
「最後まで読めた!めっちゃ面白かったわ。」
「そろそろステップアップしちゃう!?この本買ったから読むわ!」
「みんな、どうせ俺には厚い本なんて読めねぇって思ってるだろ。ふふふ、読んでやったぜ!!」
「読書上級者に、俺はなる!!!」
「みんなあなたのペンネーム先生の新作チェックしたか?俺は発売初日に即購入したぜ。」
「読み終わった!面白かったわ!けどネタバレは禁止な!!」
という二つの呟きと、先日発売したばかりの新作小説の写真が載っていた。
佐久間さん、チェックしてくれてるんだ…
私たちはそんなことを話ながら、長居していたカフェを出た。
そして事務所に向かって歩いていた。
歩道の信号機が赤だったので止まろうとするも、すぐに青を灯し始めた。
平日の真っ昼間に外を出歩く人はそんなに数多くなく、歩道を渡っていたのは私たちだけだった。
後に起こることを考えると、本当に二人でよかった。
いや、願わくば一人でよかった。
信号無視をした車が、私の少し先を歩いていた中原さんにぶつかろうとしていたのだ。
私は急いで中原さんを前に突き倒した。
そして私は、______
車に轢かれて一瞬で意識を手放した。











編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。