第9話

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2025/04/12 02:27 更新
金木犀


それは、9月中旬から10月下旬頃に咲く秋の花。


9月に一度花を咲かせ、10月に再び花開くなんていう、二度咲きする樹もあるんだとか。





『冬の金木犀』


私がこのタイトルに込めたのは、冬の険しい寒さの中であっても何度も咲く花の気高さ…


周りに左右されず自分のペースで自分らしさを保ち、誇る姿。


花言葉にもある、「謙虚」や「気高い人」、そして………


「真実」____













中原(編集担当)
もうすぐクランクアップしますね、佐久間さん
あなた
……そうだね



映画制作が決定してもうしばらく経つ。


メイン登場人物である森川楓を演じる佐久間さんも、明日クランクアップを迎える。


長いようで、短い制作期間。


この期間で私は執筆以外の仕事を数多くこなした。


公開決定という情報が世に広がっていった際には、元メンバーの人たちが祝いの品とメッセージをくれた。


もうほとんど関わりがなかったから、驚愕した。


でも、とても嬉しかった。


まだ私のことを忘れず、思ってくれていたという事実に歓喜した。


中原(編集担当)
明日はラストのシーンを撮影して終わるそうです
中原(編集担当)
見に行きますか?
あなた
うん、最後だし…見に行こうかな
中原(編集担当)
了解です!
中原(編集担当)
では監督に連絡しておきます



中原(編集担当)
そういえば、佐久間さんと何かあったんですか?
あなた
え?
中原(編集担当)
なんか、連絡をちょいちょい取り合ってますし…
中原(編集担当)
会った時にはすごく仲良さげだったので
あなた
仲良さげだった?
中原(編集担当)
ええ。主に佐久間さんが犬みたいにしっぽ振ってましたね
あなた
犬みたいって、大人気アイドルになんてことを……
あなた
まぁ、確かにそうかもしれないけど笑
中原(編集担当)
それに佐久間さん、最近小説を読み始めたそうですよ
あなた
え、そうなの?
中原(編集担当)
はい、Xでそんな呟きをしてました
あなた
チェックしてるんだ?
中原(編集担当)
あなたのペンネーム先生と仕事で関わった人のSNSはできるだけチェックするようにしてるんです
中原(編集担当)
何かあってからでは遅いので
中原(編集担当)
………ほら、これです
あなた
本当だ………



中原さんが見せてくれたスマホの液晶画面には、佐久間さんの呟きが大量にあった。


「最近小説にハマった!!初級はアニメの小説から読む!!(^^)」


「今日この本買ってきた。タイトルが面白そうで惹かれたから!仕事の合間に読む!」


「そろそろ中級にいくわ!!これとかいいんじゃない!?」


「最後まで読めた!めっちゃ面白かったわ。」


「そろそろステップアップしちゃう!?この本買ったから読むわ!」


「みんな、どうせ俺には厚い本なんて読めねぇって思ってるだろ。ふふふ、読んでやったぜ!!」


「読書上級者に、俺はなる!!!」








あなた
すごい……
あなた
本関係の呟きがこんなに沢山…
中原(編集担当)
あ、一番最近の奴見てください!
あなた
………あ



「みんなあなたのペンネーム先生の新作チェックしたか?俺は発売初日に即購入したぜ。」


「読み終わった!面白かったわ!けどネタバレは禁止な!!」





という二つの呟きと、先日発売したばかりの新作小説の写真が載っていた。


佐久間さん、チェックしてくれてるんだ…





中原(編集担当)
嬉しいですね、佐久間さんがこうやって宣伝してくだされば、きっとスノ担の方たちが購入してくれますよ
中原(編集担当)
大ヒット間違い無しですね!
あなた
そうだね



私たちはそんなことを話ながら、長居していたカフェを出た。


そして事務所に向かって歩いていた。


歩道の信号機が赤だったので止まろうとするも、すぐに青を灯し始めた。


平日の真っ昼間に外を出歩く人はそんなに数多くなく、歩道を渡っていたのは私たちだけだった。


後に起こることを考えると、本当に二人でよかった。


いや、願わくば一人でよかった。


信号無視をした車が、私の少し先を歩いていた中原さんにぶつかろうとしていたのだ。


私は急いで中原さんを前に突き倒した。


そして私は、______






















車に轢かれて一瞬で意識を手放した。

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