第2話

2。
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2026/01/11 03:00 更新
藤丸立香
ど、どうして、俺が作家のリッカって分かったんですか……?
立香は個人情報を何ひとつ漏らしてもいないし、作品内でもそのような描写はしていない。

SNSも持っていなく、ミステリアスな作家だとよく噂されている程で、よく担当からそう聞かされている程なのだ。

なのに何故突然バレたのか、立香には困惑しか残らなかった。
アーサー・ペンドラゴン
ふふ、簡単に認めてしまうんだ?
アーサーは立香に対してクスクスと笑った。

それに気づいた立香は遅く、ぶわっと恥ずかしくなった。
アーサー・ペンドラゴン
最初はカマかけて誤魔化すだろうに、可愛げがあるんだね?
藤丸立香
……、も、もういいんです、!!
バレたんだから、今更誤魔化しても遅いですよ……、
それに可愛げなんて全くないですから…!
ふいっ、と立香は首を振ると、またアーサーは笑った。

初対面でこんなに話せる人は少ないのに、こんな簡単に打ち解けられるなんて、とふと疑問を浮かべる。


アーサーは、前失礼するね、と対面の椅子に腰を落とした。
アーサー・ペンドラゴン
そういえば、名前を聞いていなかったね。
名前は何というのかな?
藤丸立香
あ、えっと、藤丸立香です。
歴史学科の2年生です
パソコンを仕舞い直してから、もう一度アーサーの方を向く。

アーサーの顔立ちはとても整っていて、大学の女性たちが騒ぐのも確かだ。

アーサーは軽く上下に首を振り、またにこやかに笑った。
アーサー・ペンドラゴン
うん、藤丸立香、だからリッカというんだね。
それに、作品の主人公も同じ名前ときた。
なるほどだね
安直なネーミングにしすぎかな、と思われたに違いない。

本名を主人公と同じ名前にして作品を作り上げる人はいないと言っていいだろう。

身バレしても仕方ないものなのかなと立香は思った。
アーサー・ペンドラゴン
じゃあ君の事は立香と呼ばせてもらうよ。
立香は僕のことをアーサーでも、好きに呼んでくれて構わない
藤丸立香
あ、…じゃあアーサー、って呼ばせてもらいます
立香はそう伝えると、対面に座るアーサーの顔がにこりと微笑み、うん、と頷いた。

名前を呼んでもらえて嬉しそうな雰囲気が漂っている。


アーサーは軽く喉を鳴らして、話を変えて話し始めた。
アーサー・ペンドラゴン
僕が君のことをリッカ先生だと分かった理由は簡単さ。
僕の妹はアルトリアと言うんだけれど、突然僕の読んでいる本に対して声を荒げたんだよ
アーサーは手に持った本を指差し、表紙をトントンと叩いた。









1年半ほど前、アーサーは書店に行くと人気絶大と書かれたコーナーを見つける。

そこには数種類の小説が置いてあり、ランキング形式で並べてあった。

よくある異世界転生ものや、ファンタジータイプ、その中のランキング2位に入っていたのが立香の書いた作品、『Grand Order』だったのだ。

既に3冊刊行されているようで、そのシリーズ全てがそこに並べてあった。


アーサーは惹かれ合うかのように作品3冊分を手に取り、レジカウンターへ向かった。


本を購入し、自宅に帰ってリビングのソファで買った小説を早速読んでみる。

アーサーは色んな本を読むことが好きで異世界転生ものも時々読んだりする。


Grand Orderを読み進めていくうちに、不思議に思った事があった。

よくある主人公は最初から強かったり、チート能力を持っていたりするのだが、この『藤丸立香』という男はそういうもののカケラも無かったのだ。

そのまま読み進めていくうちに、ソファの前にあるローテーブルに飲み物を置く音が聞こえた。
アルトリア・ペンドラゴン
何を読んでいるのです、兄様にいさま
顔を上げるとそこには妹のアルトリアが立っていた。

外出から帰宅したのだろう荷物が対面のソファに置いてあった。
アーサー・ペンドラゴン
アルトリア、おかえりなさい。
今日書店で良さそうな小説を見つけて買ってみたんだ。
本に繋がっている紐のしおりを挟み、閉じる。

アーサーはそのままアルトリアに本を渡した。

アルトリアは受け取ったあと、本の題名を軽く呟くと、本を開き軽く読み始めた。

立ったまま読むので、隣に座りなよとでも言うようにソファを軽くポンポンと叩いた。

それに気づいたアルトリアは、一瞬目線を本から外し、アーサーの隣に腰を下ろした。


数分熱中してアルトリアは読んでいると、はぁっ、!?と声を荒げ叫んだ。

アーサーは隣で持ってきてもらった飲み物を飲んでいるとアルトリアが大きな声を発するのに驚き、飲み物が変なところに入ってしまい、むせてしまう。
アーサー・ペンドラゴン
っく、けほ、…っ、けほ……ど、どうしたんだい、アルトリア…?
アルトリア・ペンドラゴン
……マ、“マスター”…?
突然アルトリアが意味不明な言葉を発した。

マスターなんて普通使わない言葉である。

使うとすればカフェバーなどのスタッフや店主に対して使ったりという程だが、アルトリアはそのような店には行ったことはない。
アーサー・ペンドラゴン
マスター、とはどういう事だい、アルトリア?
アルトリア・ペンドラゴン
あ、えっと……それは、ですね………。
多分この作者は私の旧知の知り合いだと思うのです。
旧知というより、“前世”の記憶ですね。
以前から、前世の記憶が戻り、ずっと隠してきたのですが、この作品は私の知っている記憶と全てが一致しているのです
本を閉じ、膝の上に置くと瞳をゆっくりと閉じた。

アーサーから見たアルトリアの雰囲気は、記憶を遡っているみたいだった。

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