第62話

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2024/05/31 08:00


怪盗キッドはワイヤーを回収し、
ハングライダーで逃走を図ろうとする。





その時、怪盗キッドは
2つの気配・・・・・・があることに気がついた。








怪盗キッド
おや、探偵の少年と
一緒ではなかったのですね。


あなた
コナンくんとは別行動にしたの。
あなた
その方が都合が善いから。







中原中也
ったく、異能力者かと
身構えて損したぜ。
中原中也
ただの無能力者かよ
 
怪盗キッド
無能…とは手堅い評価ですね。


怪盗キッドはそう言って
観客に茶々を付けられた手品師のような顔をした。


夜の風に彼の白い外套が揺られ夜空の黒を隠す。
 
あなた
あぁ、私たちの次元では異能力を持たない人間を一概にそう呼ぶだけよ。
あなた
気を悪くされたのなら謝るわ。
怪盗キッド
いえいえ。観客の期待に応えてこそ
一流の手品師マジシャンですから。


中原中也
だったら“観客”の期待に応えて
宝石を返却したっていいンだぜ?
怪盗キッド
残念ながら
それは出来ません。
怪盗キッド
もう私の手元に宝石はありませんので。


怪盗キッドはそう告げて顔の横で両手を広げた。

「タネも仕掛けもありません」とでも告げるように。




ふとその時、少女は怪盗キッドの視線が
自身の鞄に向いていることに気付く。

あなた
真逆まさか…。

少女は恐る恐る自分の鞄を探る。



その時、鞄の中から見覚えのない物を見つけた。


楕円形、直径8cm程の輝く石
___ムーンストーンだった。

怪盗キッド
お目当ての宝石ではなかったので
返却させていただきます。
 

あなた
背後には注意していた筈なのだけど…。

少女はそう言って
少しがっかりした表情を浮かべた。

これでも少女は危険察知能力、
危機管理能力及び五感は優れている。




少女は気を紛らわすように溜め息をついた。





その隙にと言わんばかりに
怪盗キッドはハンググライダーを開く。

怪盗キッド
それでは私はこれで____
中原中也
おい待てよ。


中也がそう告げた途端、
足場にしていた硝子にバリバリ…!とヒビが入る。

怪盗キッド
…へ?

怪盗キッドが超強化硝子を
割ったカラクリは単純なことだ。


いくら硝子が頑丈であれど、
それに比例して骨組みが頑丈なわけではない。



だから怪盗キッドは強化硝子の繋ぎ目を
小型爆弾で破壊し、硝子を割ってみせた。









だけど中也は違う。


超強化硝子を力付くで割ってみせた。








その有り様に、先程までポーカーフェイスを
貫いていた怪盗キッドも思わず目を点にする。


中原中也
簡単に逃がすと思ってンのか?
 
中原中也
まぁ、俺の頼みをひとつ聞いてくれンなら、逃がしてやってもいいが。
 
中原中也
______。


怪盗キッド
ぇ?
あなた
…嘘でしょ…

美しい月明かりの下で
少女はただ唖然とすることとなった。






翌日 あなたside





prrrrr……、prrrrr………





先日のパーティーの疲れを癒すために
毛利探偵事務所のソファーに横になっていたとき、

一本の電話が掛かってきた。


prrrrr………prrrrrr………




初めは無視する心算つもりだったのに、諦めの悪い
呼び出しコールが続いたためやむを得ず手に取った。






太宰治
「あなた~!
一寸ちょっとどういうことだい??」
太宰治
「昨日蛞蝓が私に
音声ファイルをよこしたのだけど…」

ピッ…と音声ファイルの再生ボタンを
押したと思われる後に聞こえてきたのは


聞き覚えのある会話声だった。


 
中原中也
「俺に言うことがあンじゃねェのか~?
だ~ざ~い~~笑笑」
太宰治
に、二度目はなくってよっ!!
中原中也
「あ"~?聞こえねェぞ~?」
太宰治
「二度目はなくってよっ!!」
 
ピッ…

太宰治
「私こんなこと
言った覚えないのだけど、」
太宰治
「これじゃあ私があの莫迦に負けたみたいじゃあないか!!」

無論、知っている。

これは太宰さんの声だけど、
本物の太宰さんが言った訳じゃない。



これは先日、中也が怪盗キッドを逃がす代わりにと、怪盗キッドに太宰さんの声で言わせた台詞だった。








中也の太宰さん嫌いは昔からのこと。



私が口を挟もうが、止めようが
防ぎようがないこと。



だから止めることはしなかった。
私が巻き込まれたくないから…という訳ではない。




太宰治
「あ~もう最悪、」
太宰治
「中也のワインセラー爆破_____」


聞こえてはならないようなことが聞こえたとき、
私は咄嗟にプチッ___と電話を切った。








世の中、知らない方が善いこともある。









あなた
却説さて、宿題でもしようかしら。


私は気を紛らわせるかのように
そんな独り言を呟いた。










第八章「宴に潜む白い怪盗」完
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第九章「動き出すふたつの組織」

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