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季節は夏。俺はいつも通りの朝を迎えると、2人が寝ている傍からそっと抜け出した。
扉を開ければ生い茂る草に優しくなびく木々、空を見上げれば輝かしい青に自由に泳ぐ雲。
良い朝だな、と昨日と変わらない感想。
こんな日には決まって、“彼”が現れる。
正面からこちらに近付いてくる彼は、いつものように笑顔を浮かべ、大きな声で俺の名前を呼ぶ。
結構な距離を走ってきたはずなのに、息を乱さずにいつもの調子で話し始める彼。
さすが、その力でこの国を支え続けているだけあるな。
今日はたまたま早く目が覚めただけで、いつもはもう少し気温が高くなってから起きている。
けれど毎日毎日、彼は木陰から現れて、俺に国の話をしてくれる。
今日は負けたなぁー、と悔しそうに呟く金髪の彼。
毎日毎日、こんな早い時間から俺の事を待っていてくれたのか、と申し訳なく思ったが、そもそもはこいつが勝手に来てやっている事。と、俺は1度謝ろうとしたが踏み止まる。
こいつを煽ててはいけない。
何故なら…
そう。こいつが調子に乗れば、ゾムが発火するから。
どういう理由で彼が怒るのかは知らないが、こいつと絡むといつも機嫌を悪くする。
先程までの笑顔を無くし、大きな目でゾムを見つめる男。
2人の間からこちらを見つめるホワイトレースフラワーは、どこか気まずそうだった。
エミさんの家の周りには、普通この辺りに咲くものでは無い花も沢山咲く。だから俺はその花の事をあまり気に留めなかった。
その瞬間、ホワイトレースフラワーが視界から居なくなる。
あまり2人に関与したくなかったから話を聞いていなかったが、気が付けば俺はゾムに肩を抱き寄せられていた。
彼の匂いが強くなり、一気に顔が熱くなるのを嫌でも感じた。
少し不服そうな表情の彼と目が合う。彼の瞳は、空が詰まったような奥行のある、不思議な水色だった。
目を細めて笑った後、彼は片手をヒラヒラと揺らしながら森の奥へと消えていった。
呆気に取られていると、ゾムが口を開いた。
俺の目を見つめ、両肩を優しく揺らしながら叱責するゾムの表情は不安でいっぱいだった。
目を細めれば、優しく微笑み返される。
少し口を開いたまま思案した後、ゾムは優しくそう言った。
何も言わずに先を歩き始めたゾムに慌てて着いていく。
やはり、気を悪くさせてしまったのだろうか。
いつもなら時間経過で許してくれるが、そもそも、何故俺が怒られているのか本当に分からない。
今日も、朝から機嫌の悪い彼とどう接していこうか…考える。









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編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!