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第1話

命懸け蟹クッキング
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2024/06/08 13:43
兄の事は大好きだ。
でも、私には太宰治のことが分からない。
拾われた時から、ただその目のとても黒くて深いことと、血の匂いの染み付いたことだけはよく分かって、それ以外は何も分からなかった。
ただ、怖かった。
(なまえ)
あなた
お兄ちゃん。蟹鍋と蟹チャーハン、どっちが良いと思う?
太宰治
えー、どっちもかなあ。
2番目に面倒臭い回答が来た。因みに1番面倒臭いのは、どっちでも良いという答えだ。私は多用してしまうが。
しかし怖いもんは怖いので、特に反発することも逆らうこともせずに従う。
(なまえ)
あなた
分かったー。
そう言いつつお兄ちゃんの顔を見つめる。やはり整った顔だ。この顔ならばあのクソみたいな女関係も頷ける。頷けちゃいけないが。
太宰治
今何か失礼なこと考えた?
(なまえ)
あなた
びみょい。
この答えは大丈夫だろうか。
何時もより気を張って会話をする。何故かって?
お兄ちゃんの黒い服からバリバリに血と硝煙のかほりがするからだ。
何このかほり。監禁系グロホラーですか???
そもそも命懸けの蟹(スーパーで安く売っていた)づくしご飯作りって何よ。意味分かんないんですけど。死にたくないんですけど。
私まだピチピチの15歳よ?
太宰治
着替えてくるねー
(なまえ)
あなた
はーい
お兄ちゃんナイスプレー。この家が殺人現場のかほりになる前にそうしてくれて嬉しいよ。私の命日も近くなった気がするけど。

だって、この待遇に幾ら特別感があるからと言って、私の代わりは幾らでもいるし、私がお兄ちゃんのことを公言したら即座に殺される。一緒に駆け落ちだなんていうどこかの御伽噺の様なことはあり得ないのだ。
だって此処は現実で、他でもないヨコハマなのだから。

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