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第29話

スタンドアップ 1
26
2022/01/31 03:13
雪が降るのが窓から見えた。花菜は久しぶりに聞いた玄関のチャイムに走って出た。
加藤翼
加藤翼
おはよう、花菜
本村花菜
本村花菜
おはよう、翼……
二人はお互いにお互いが存在していることを証明するかのように抱き締め合っていた。愛しい温もりに花菜は涙を流した。
本村花菜
本村花菜
良かった……元気で……
加藤翼
加藤翼
ごめんな、花菜。愛してるよ
本村花菜
本村花菜
私も……
二人は手を繋いで学校に向かっていると、門では大きな団体が居た。その中には違う学校の制服来た者も居た。
保科春翔
保科春翔
翼先輩……
春翔は結衣と栞奈にアイコンタクトし、ニヤリと笑って言った。
  _人人人人人人人人人_
>退院おめでとう!!!<
 ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y ̄
皆の声に翼は目と口を大きく開けていた。春翔が翼に一歩近付いた。
保科春翔
保科春翔
先日はありがとうございました。結衣と先輩達のおかげでどうにかなりました
加藤翼
加藤翼
いや、別に良いさ。仲間が居てホッとしたよ
翼と春翔は意味深な笑顔を浮かべて握手をした。栞奈達は何があったのかよく分かっていないが、何かあったんだろうということだけは理解出来た様子だ。
綾田優樹
綾田優樹
翼、戻ってきてくれて良かった!
勢いよく抱き付いてきたのは優樹だった。同じクラスになって毎日一緒に居た友達である。
加藤翼
加藤翼
分かったから離せって!
綾田優樹
綾田優樹
翼が元気で何よりだ!
幸せそうに笑っている翼を見て、花菜も幸せな気分になれた。花菜を久々にメンバー全員に会えた気がする。
加藤翼
加藤翼
あのさ……
翼が花菜の顔を一瞬見て言い出した。
加藤翼
加藤翼
面白いところを紹介してやるよ。俺のマイスウィートハウス!
花菜はその言葉の意味が分かって翼の顔を見た。翼の顔は以前より生き生きとした顔をしている。

翼のマイスウィートハウスとは、花菜が翼と出会ったあの秘密基地だ。秘密基地というより、翼専用の一軒家だ。ログハウス風なのがとても心地好いところだ。

多言したがらない翼が言い出したことに驚いた。皆が彼を変えたのだろうか。

門で征也と光一と別れ、それぞれの教室に向かった。
教室にて、祥也が花菜に話し掛けてきた。
風間祥也
風間祥也
花菜、ちゃんと救えたんだね
本村花菜
本村花菜
うん……救えたよ
花菜が帰った後、能力が芽生えてしまった春翔と電話越しで翼が父と力を合わせて救おうとしていた。その事実に花菜は彼を救えたという確信を持つことが出来た。
風間祥也
風間祥也
加藤先輩のマイスウィートハウスって気になるな
本村花菜
本村花菜
そこは、私達が出会った場所なの。そこから始まった
あの秘密基地で花菜の人生は大きく変わった。こんな自分を翼は愛してくれる。友達も出来て、今は幸せだ。全ての始まりはあの秘密基地からだ。
風間祥也
風間祥也
そっか……
翼より前に花菜に想いを抱いていた祥也からしたら複雑な話だ。もっと前に自分がアプローチをしたら何か変わったのだろうか。それでも、彼女の人生がここまで良くなることはあったのだろうか。
倉上陽太
倉上陽太
栞奈、今日は先生も行ける?翼先輩の家って気になるじゃん。皆で行きたいよな
陽太が机に腰を掛けて栞奈に行った。栞奈は難しい顔をした。
松山栞菜
松山栞菜
分からない。一番の解決法は山本先生かな?
工藤清香
工藤清香
ああ……でもあの先生怖い
清香が肩を震わせた。

清香は剣道部で顧問が翔太なのだが、翔太の稽古はかなり厳しく、かなり叱られてきた清香にはトラウマ並みだ。

そんな清香に陽太は言った。
倉上陽太
倉上陽太
アイツ、篠原先生の前だとキョドって可愛いよな
松山栞菜
松山栞菜
確かに、ギャップはあるよね
倉上陽太
倉上陽太
俺らのおかげで二人は親友になったみてぇだな
工藤清香
工藤清香
親友なのかな……
陽太と栞奈の会話に清香は首を傾げた。確かに、裕也と翔太は仲良しだ。本当に親友というラインまで来たか分からない。
別のクラスにて、春翔と結衣と利奈は他愛ない話をしていた。結衣が話を変えた。
西宮利奈
西宮利奈
翼先輩、元気そうで良かったです
保科春翔
保科春翔
翔先輩も大喜びだったな
退院したと聞いた翔の喜び方を思い出して、三人で笑った。征也達と一緒にカラオケに行っていた春翔達はそれを目の前で見たのだ。

三人で話していると、結衣は話を変えた。心配そうな顔で言った。
深瀬結衣
深瀬結衣
春翔、大丈夫なの?その力……
保科春翔
保科春翔
大丈夫だよ。コントロールも出来るようになったから今みんなが何をしてるかも見えるよ
春翔はその日のうちにどうにかしようとして、能力のコントロールが出来るようになったのだ。結衣はそれに驚愕していたというのを春翔は覚えている。

春翔は控えめに能力を使ってみた。翼が翔と優樹と話しているのが見えた。
藤田翔
藤田翔
翼、戻ってきてくれて良かったよ
綾田優樹
綾田優樹
俺たちだけだと寂しいしな
翔と優樹が安堵の表情で言った。翼は少し申し訳無さそうに微笑んだ。
加藤翼
加藤翼
というか、翔が違い過ぎて驚いたんだけど
綾田優樹
綾田優樹
記憶が戻っただけでこうもなるもんかね
翼の疑問に優樹は呆れた顔で翔を見た。そして、三人で笑い合った。


ついに、平凡な青春が始まったのだ。


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