ゆあんとなおきりは、
突然姿を消したじゃぱぱとうりの捜索をしていた。
目を覚ますと2人のメンバーが消えていた。
心配にならないはずがない。
あの2人なら大丈夫だろうと思いつつ、
念の為捜索をすることになった。
とはいえ、
森の中を探すのは大量の体力を消耗するわけで。
2人の足はもう限界だった。
かれこれ2時間ほど、森の中をさ迷っている。
目的はあれども、疲労には敵わない。
その場を少しでも明るく保とうと気を使った発言。
しかし内心では、責任を感じていた。
自分がわがままを言ったせいで
メンバーの1人が爆発に巻き込まれたかもしれない。
行方不明になったのはきっと自分のせいだ。
あんなことを言わなければよかった。
姿を消すべき人間はたっつんではない。
船番を任せるんじゃなかった。
最後まで自分でやり遂げればよかった。
たくさんの後悔が浮かんでくる。
もし本当に命を落としていたらと、
不安で仕方がなかった。
砂浜で思う存分涙を流したじゃぱぱは、
目を少し腫らしたまま洞穴へと帰還した。
できるだけ平然を装って。
リーダーの弱い部分を見せないようにして。
案の定、突然現れた2人に
驚きをかくせていないメンバーが3名。
その中にゆあんとなおきりの姿はなかった。
もふが声をはりあげながら、2人を問い詰める。
たっつんのこともあったため、
相当心配していたのだろう。
始めこそ挙動不審になってしまったものの、
その後は普段通りに言葉を紡いだ。
明るい笑顔を見て、うりを除くメンバーは
『呆れた』という表情をつくった。
狭い洞穴に、明るい笑顔が広がった。
多くのメンバーが欠けていてもこの明るさ。
12人が揃っているカラフルピーチは、
どれだけ元気なのだろうか。
声を上げて笑うじゃぱぱに、
うりは斜め後ろから心配の眼差しを向けていた。
元気に振舞っている。
気づかれない。
リーダーのポーカーフェイスは
尋常じゃないのだから。
しかし事実がある。
先程まで泣いていたという事実が。
現実を受け止められず、
自分が背負うべき責任に耐えられず、
苦しんでいたという事実が。
それをうりは知ってしまった。
知ってしまった身としては、
じゃぱぱの笑顔が引きつっているようにしか
見えなかった。
ガサガサガサ…
突然背後から、
草をかき分けるような音が聞こえた。
その瞬間その場にいたメンバーは肩を震わせ、
音がした箇所をいっせいに見つめた。
動物か。
メンバーか。
のあは息を飲み、
シヴァは肉食動物に備えて腰の剣に手をかけた。
草むらから現れたのは、
どぬくたちについていったはずのるなだった。
るなは驚くメンバーの顔を見て、
喜びの声を上げた。
るなは自分の後ろに向かって笑顔で言った。
そしてそこから現れたのは、
もう一方のカラフルピーチの欠片だった。
3人は気まずそうな顔をして、
るなの後ろに立っている。
本当に突然のことだった。
たっつんのことで揉めて、その後はお互いに
行方なんて知らなかったはずなのに、
彼らはじゃぱぱたちの前に現れた。
るなが目に涙を浮かべながら、のあに抱きついた。
洞穴に響く、謝罪の言葉。
己の言動をすべて後悔し、やり直したいという想い。
それを伝えるには十分だった。
カラフルピーチが12人で仲良くやっている理由。
これがその1つ。
滅多なことがない限り喧嘩はしない。
そして喧嘩をした時は、すぐに謝る。
これまでにも何度か意見の違いで
大きな言い合いになってしまったことはあった。
しかしその度にお互い反省し、謝罪し、
元のグループに戻っていた。
やはり12人の絆は、誰にも引き裂けないのだろう。
もちろん彼ら自身でも。
沈黙を破ったのは、抱きついてきたるなを
ギュッと抱き締め返したのあだった。
もしこのまま
カラフルピーチが元に戻らなかったら。
その『もしも』が頭に出てこなかったはずがない。
12人でカラフルピーチ。
いつしかメンバー全員が
口癖のように言うようになった言葉。
はじめはリーダーのじゃぱぱが
言い出したことだった。
「カラフルピーチはこれ以上でも
これ以下でもない!
12人で1つのグループだ!!!」
何度も戦闘や冒険を繰り返していくうちに、
じゃぱぱの言葉が理解できるようになったメンバー。
そして今、その言葉があったからこそ
亀裂が入っていたカラフルピーチが元に戻ったのだ。
耐えられなくなったえとは、
るなと一緒になってのあに抱きついた。
シヴァともふは、
軽い拳でどぬくとヒロの頭を小突いた。
その様子を見ていたじゃぱぱとうりは、
戻りつつある日常に笑みをこぼしていた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。