第70話

続き
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2026/03/01 04:27 更新

タクヤside



リハーサル室の鏡は、
光を反射してまぶしかった。
ハルは少し遅れて入ってきた。


目の下のクマ、乾いた唇。
マネージャーが差し出した水を一口だけ飲む。



タクヤは気づいた。
笑うタイミング、声のトーン。
いつもより半拍ずつ遅れている。



「ハル、大丈夫か?」


「大丈夫です、撮影が続いてて……」
その“です”の語尾が少し震えた。



リハが始まる。
音楽に合わせて身体を動かす。
でも、ハルの目はどこか遠くを見ていた。
鏡の中の自分を見ているのか、
別の誰かを思い出しているのか。



休憩時間。

タクヤはスマホをいじるふりをして、
こっそりスタッフに声をかける。



「最近、ハルひとりで帰ってる?」

「うん。撮影終わりに直接来ることも多くて。」



その言葉に、胸がざわついた。
なんか関係あるか。?


(一応、身辺機にしとくか。)

窓の外、夕方の光が薄く差し込む。
事務所の場所は知られてることが多いから
念の為の確認。


道の向こう外に、
オレンジ色の服を来た誰かが立っている。
人通りが多い所のため、わざわざ立ち止まるような意味がないため気になった。


が、ユーキの「再会するぞー」の声に
見るのをやめた。



夜、リハ後のロビー。
ハルがイヤホンをつけたまま立っていた。


タクヤが隣に立つと、
小さく息を吸う音が聞こえる。


「最近、寝れてるか?」


ハル「……うーん、寝てるような、寝てないような。」


「悪い夢?」


ハル「うん。誰かに見られてる夢。」



その言葉で、タクヤは一瞬、
昼間の外の光景を思い出した。



「直接なにかあった?」


ハル「いや、直接はないっすよ笑」



そう言って笑うハルの目の奥。
そこには、ほんの小さな“助けて”が見えた気がした。

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