テレビ局内の巨大なリハーサル室。
今日は、年末特番の目玉企画である「ダンス選抜コラボ」の合同練習日。
スタジオにはSnow Man、ME:Iをはじめ、各グループのトップダンサーたちが集まり、お互いのプライドを懸けた熱い空気が流れていた。
振付師「はい、じゃあ全体のフォーメーション確認するよー! 岩本くんと石井さんは、サビの頭でセンターでシンメ(左右対称)になって!」
蘭「(っ……!)」
プロとして表情には出さないものの、蘭の心臓は一気に跳ね上がった。
まさか公式の企画で、照さんと隣り合わせで踊ることになるなんて。
照「よろしくお願いします、石井さん」
照は完全に「大先輩・岩本照」の表情で、クールに一礼して蘭の隣に立った。
しかし、2人が鏡に向き合ってポジションについた瞬間、照は他の誰にも見えない絶妙な角度で、蘭に向かって片目をクッと細めてみせた。
蘭「(あ……『緊張すんなよ』のサイン……!)」
そのいつもの優しい合図に、蘭の体からスッと余計な力が抜ける。
振付師「じゃあ、音かけます! 5、6、7、8!」
爆音で流れ出すビート。
2人の身体が、まるで1つの生き物のようにシンクロして動き出す。
照の圧倒的な体幹の強さとダイナミックなステップに引っ張られるように、蘭のダンスもいつも以上にキレを増していく。サビの瞬間、鏡越しに2人の視線がバチッと交わった。
(蘭、最高)(照さん、負けません)
言葉は交わさなくても、ダンスのビートを通じて、2人の気持ちが完全に重なり合っているのが分かった。
佐久間「うおーー! 照と蘭ちゃんのシンメ、ヤバすぎ!!
画面の圧がハンパない!!」
スタジオの隅で見ていた佐久間が大興奮で声を上げる。
振付師「うん、2人の空気感素晴らしいね! 今日の練習はここまで!」
全員「お疲れ様でした!!」
全体練習が終わり、各自バラバラに撤収する時間。
蘭はスポーツドリンクのボトルを片手に、わざと少し遅れてレッスン室を出た。
廊下の自動販売機の物陰、少し暗くなった場所で待っていたのは、やっぱり照だった。
照「お疲れ、蘭」
照はバケットハットを深くかぶり直し、フッと柔らかく笑った。
蘭「お疲れ様です、照さん。……さっきの鏡越しの視線、心臓が止まるかと思いました」
照「あはは! でも、蘭ちゃん完璧に俺の音に付いてきてくれたじゃん。踊ってて、めちゃくちゃ気持ちよかった」
照は誰もいないことを確認すると、蘭の頭をポンポンと、だけど少し名残惜しそうに優しく撫でた。
照「あそこのステップ、蘭ちゃんがカッコよすぎてさ。他の男のダンサーもみんな見惚れてたから、内心ヒヤヒヤしたわ。……やっぱり、俺だけのものにしておきたいんだけど」
蘭「もう、お仕事中ですよ?(笑) でも……私も、照さんの隣で踊れて、すごく幸せでした」
照「ずるいなぁ、そういうこと言うの。……今日の夜、俺の部屋来て。さっきのダンスの、2人だけの『答え合わせ』しよ?」
照の低い声と、悪戯っぽく、だけど独占欲に満ちた瞳。
レッスン室でのハラハラ感の後に待っている、2人だけの甘いご褒美。
蘭「……はい。楽しみにしてます」
廊下の向こうから聞こえる賑やかな声を背に、2人は誰にも見つからない小さな微笑みを交わし、それぞれの楽屋へと戻っていった。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!