千賀子は、
彼である紀伊浩二が3日間の有給休暇のあと、
恋愛のスペシャリストこと、橋田に
ある相談を持ちかけていた。
ふぅ…と、ため息をつく。
お互いが組織の上層なだけあり、
中々時間を捻出するのが難しいのだ。
時間シフトでもあるが為に、
都合が中々合わないのだ。
紀伊は顔をやや俯かせ、
頭の後ろを掻きながら通り過ぎて行く。
よく表情は見えなかったが、明らかに気まずそうに赤らめていた。
千賀子は心に決めた。10年仕事を共にしても
彼のことはまだ
知らないことの方が多いかもしれない。
お互いに男女として意識し始めたのは1年にも満たない。これまでは、互いにただのビジネスパートナーだった。
でも、今は違う。愛は実ったばかり。
これから関係性を築き上げ、ゆっくりと育みたいと彼女は心からそう思っている。
そして彼も。
浩二は自席に座り、パソコンを立ち上げ、
複雑な思いを胸に抱いていた。
なんだか、恥ずかしいような、嬉しいような。禁断の社内恋愛。この先の不安も当然あった。だが、この熱い気持ちは変わらない。
彼も彼女を愛しているから。
どんな障壁が出てこようと乗り越えていけそうな気がした。
今日は、上層部共同のミーティングだ。
参加者はオフィス主任、その他は
紀伊と千賀子、マネージャー、
加えて橋田だ。
彼にとって千賀子との顔合わせは気まずいものでもあるが、何とかやり過ごせそうだ。
これからミーティングが始まる。
しかし、思わぬ展開が待ち受ける…!?
後編にづつく。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。