第12話

【第9話】お家デート
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2024/02/13 03:00
土曜日の朝。
待ちに待ったお家デートの日。

千賀子は早起きをして、クッキーを焼いた。
丁寧にラッピングする。

今日は念入りにお洒落をした。

お洒落とは言っても、彼の好みに合わせて
控え目にナチュラルメイクに仕上げた。
千賀子
千賀子
髪を少し、巻こうかな。

…紀伊さん、気付いてくれるかな///
千賀子
千賀子
━━━━━

…よし、完成。

そろそろ出ようかな。
千賀子は家を出た。

良い天気で、清々しい。

自転車で風を切りながら走る。

浩二の家は、千賀子の家と割と近い。

15分程だ。マンションの5階らしい。
千賀子
千賀子
…ここね。

っ…///またまた緊張してきちゃった。
エントランスに丁度、
大きな鏡があったので
身だしなみチェックする事にした。

巻たての髪が崩れていないか心配のようだ。
千賀子
千賀子
さっき風が当たったから
少し乱れてるみたい…
髪のひと房を掴み撫で下ろす。

ふぅっとひと息付き、緊張を和らげた。
千賀子
千賀子
…よしっ。

行こう。紀伊さんの階は…─
すると、彼が千賀子の名前を呼んだ。

ビクッと肩を上げた。

そう。彼がエントランスに迎えに降りて来てくれた。
浩二
浩二
千賀子…!
千賀子
千賀子
あっ、紀伊さん!
浩二
浩二
ははっ。ごめん。

ついついお節介で降りてきたよ。
一緒に上がろうか。
千賀子
千賀子
ううん。ありがとう。
わざわざ迎えに来てくれて。嬉しい。

今日、デート…楽しみだね//
浩二
浩二
そうだな!

…あっ、今日なんか雰囲気違う?
千賀子
千賀子
ふふっ。お洒落してきたの。
浩二
浩二
へ〜ぇ…

もしかして、髪巻いた?

…いいと思う///
千賀子
千賀子
良かった…!変じゃなくて///
(気付いてくれた…///嬉しい。)

エレベーターから降りると、
彼の家が。

502号室。

彼が先にドアを開けてくれた。
浩二
浩二
さあ、どうぞ。

上がって。
千賀子
千賀子
お邪魔します…。

(ここが紀伊さんの部屋…!いい匂いがする。)
リビングに招待される。

隅にはゴルフクラブがある。

モダンな雰囲気のインテリアで
彼らしい部屋だ。

2人はソファーに腰掛けた。
千賀子
千賀子
(清潔感があって、いいお部屋…。)
浩二
浩二
今日は…来てくれてありがとう!

いっぱい楽しもう!
千賀子
千賀子
うんっ。

…あ、そうだ
千賀子は手提げの中から、
ラッピングのしてある手作りクッキーを
彼に差し出した。
千賀子
千賀子
これ、どうぞ。
浩二
浩二
…!!

わぁ、ありがとう!
嬉しいよ!
千賀子
千賀子
紅茶のクッキーなの。

紀伊さんの口に合うか分からないけど…。
(喜んでくれて良かったぁ///)
浩二
浩二
後で、映画見ながら一緒に食べよう。

俺はコーヒーいれるね!
千賀子
千賀子
うん!
浩二
浩二
…。///
千賀子
千賀子
…?

どうしたの?///
彼はじっと見つめてきた。

熱い視線を向けられて胸が高鳴る。
浩二
浩二
ははっ。…好きな女性から
手作りのお菓子貰うなんて、
夢にも思わなかったからさ///

40年。本当に好きな人からね。
千賀子
千賀子
…///
浩二
浩二
あのさ…。

お礼させて…?
隣に座る千賀子にキスをした。

彼は優しく両腕で抱き寄せ、

その掌で頭を撫でられる。

息が止まりそうなほど、不意打ちの口付け。

一瞬で高揚し、頬を赤く染めた。
千賀子
千賀子
ん///
浩二
浩二
あー。

俺って、本当にキス魔だよなぁ。

頭のネジ外れたみたいだよ。
千賀子
千賀子
(きゃあ///またキスされちゃった///)

良いと思う。
…私、紀伊さんにキスされたら嬉しいし///
浩二
浩二
そっか…///

なんか、今日の千賀子、

本当に綺麗…。
(いつも綺麗だが、いつにも増して…。)
千賀子
千賀子
ほんと///

ちょっとだけ、気合い入れたの。

(紀伊さんもなんか、いつも会社で見るのと違う///…男らしくて…。いつもより優しい目をしてる///)
浩二
浩二
映画は…もう少し後にしてさ…。

い、一緒に…///
千賀子
千賀子
…ん?///
浩二
浩二
仲良く…しない?

せっかく、2人きりだし、
俺ん家だし…さ///

どう…?
千賀子
千賀子
うん…///

…いいよ。///
浩二
浩二
そう?…良かった///
千賀子は彼に委ね、
ソファーに仰向けになった。

見上げると彼の顔が。

お互いが密着し、心臓の音も伝わってくる。
千賀子
千賀子
…っ///  

(ひゃああ///どうしよ///…どうなるの、私…!///)
浩二
浩二
…千賀子…。

目を…///
千賀子
千賀子
…///
(だ、大胆すぎるよぉ///)
彼は1回、彼女の襟元を軽く撫で下ろす。

緊張しているのか、手が冷たい。

千賀子は、今にも心臓が飛び出そうだ。
浩二
浩二
…///

(落ち着け落ち着くんだ。決して、早まらないように。…///彼女の様子を見なきゃ)
その時。


突然、インターホンが鳴り響いた。

彼は身体を起こし、立ち上がる。

千賀子も、閉じていた目をゆっくり開けた。
浩二
浩二
あっ、ごめん。
誰か、来たみたい。
(くっそーぉ、いい時に…っ)
千賀子
千賀子
お、お客さんかな?
彼はモニターを、覗く。

そこに映っていたのは…。

そう、部署異動する予定の例の「あの人」

その名も、「轟 広美」。

なんとも言えないような、表情で
ドアの前に立ち尽くしていた。
浩二
浩二
"…!!轟だ!
千賀子、居留守使うぞ…っ!"
千賀子
千賀子
"えっ…!?…う、うんっ!…"

(な、なんなの!?轟さん…何考えてるの!?…)
浩二
浩二
"居ないと思ったら、諦めて帰るだろう。…静かに待ってよう…大丈夫、
…千賀子。"
彼は、千賀子の身体を抱きしめ、

息を潜めて2人は轟の帰るのを待つ。

一体、轟という女は何を考えているのか。

次回に続く。

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