第6話

保健室の先生
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2024/04/28 08:16 更新
jh×dy








生徒たちの楽しそうな声がキャッキャと聞こえる昼休み。
燦々と照らされる太陽のせいで、ジリジリと肌が焼けるのを感じては夏を感じた。



「 ドーヨーンせんせ。何考えてるんですか。」


保健室の窓に付けられたピンク色のカーテンを少し開けて生徒たちの様子を見てそんな事を考えていた矢先、窓のついている壁と自分を板挟みにするように腰元に添えられた大きな手と低い声を途端にかけられた体はビクリと反応した。



「 別に何も。何しに来たんですかジェヒョン先生 」


学校で一番人気、と言っても過言ではないほど男女問わず好かれているジェヒョン。
保健室で働くドヨンに良くなついており、時折生徒が来ない時間に会いに来ている。


もうそれが日常と化しているのはここだけの秘密。



「 なんですか〜、その冷たい言い方。今頃生徒も来なくてドヨン先生が寂しくなっちゃってるんじゃないかなって来てあげたんですよ、俺 。」



「 寂しくもなってないしいつ俺が会いに来てなんて言ったのさ。絶対女の子達が探してるよ先生のこと。」



シャッ、と勢い良く開けていたカーテンを閉じてジェヒョンに囚われた体をスルリと抜け出した。


こんなところを見られたらひとたまりもない。
ドヨンは保健室の教員だ。そう、されど養護教員。
エロ漫画じゃなきゃ見ないだろ、と胸が鬱陶しくなるくらい目にしない保健室で✕✕✕なんて生徒だけで充分。
こんな大の大人が、なんならしかも男同士が。
変な噂が立ってはまずいと、ドヨンはすぐに体を動かす。



だがジェヒョンがそんなドヨンを逃がすかと言えば、否。



「そっけないなー。いつもみたいにちょっとだけチュってしてくれたら満足なのに」



「いつもみたいにって… ジェヒョン先生が勝手にしてるようなものでしょ」



思わずドヨンはジェヒョンに間髪入れずにツッコん だ。
その言い方じゃまるで自分が好んでしているみたいじゃないか、と頭の中でグルグル考え込む。



「まーた考え事ですか。ほら、早くしないと休み時間終わっちゃう」



当たり前かのようにするりとドヨンの腰元に再び腕を回せば、耳元でそう囁く。
この地獄を乗り切るにはもうジェヒョンにキスをするしかない、そのくらいドヨンには分かっている。
だが、ほんとうにもしもの話だ。
生徒が怪我でもして保健室に入ってきた時に、自分たちの教師である二人がキスをしていたら。
そんな想像をしてゾッとする。
昼休みが終われば授業をサボりにくる生徒が増えてしまう。



そう、今しかない。このタイミングでする以外ドヨンに選択肢など残されていない。



「はあ、ほんとに最後ですよジェヒョン先生。生徒に見られたらひとたまりもないもないことくらい分かってるでしょうに…」


ドヨンは呆れたようにため息交じりにジェヒョンの肩へと綺麗で長い指を持ち合わせた手をそっと置く。



「ドヨン先生って案外俺に弱いですもんね」



なんでコイツはこんな時にも余裕そうで笑っていられるんだろう。
ジェヒョンにとってはどうってことない行為なのかもしれない。
感情なんてなにもないのかもしれない。
まるで自分だけが緊張しているように、スリルを実感するように、冷や汗が背中を伝う。



早くしなきゃ。
生徒たちが来る。
見られるかもしれない。
今して、もし見られてたら?
あくまで自分は教師、見られて噂でも立てられたらいつクビになってもおかしくない。


でも、それはジェヒョンも同じ。


自分と同じ立場にいる筈なのに、寧ろ楽しんでいるようにしか見れない。
遊びなのかもしれない。
いつも可愛い、と言って見詰めてくるジェヒョンに心を奪われているのは、いや、寧ろ可愛いと言われているのは自分だけじゃないことくらい分かっている。




怖い。



嫌だ。





壊したくない。



いつもしていたのに、恐怖心がジェヒョンの笑みと共に溢れ出す。



だがそんな事、ジェヒョンからしたら計算通りと言っても過言ではないだろう。
寧ろ好都合。




ジェヒョンは怯えた顔をするドヨンにそっとキスを落とす。


いや、いつもよりは少し乱暴かもしれない。




「っ、ん、… ぁっ、」



ドヨンは不意にキスをされると動揺する。
声をあげようと、必死に呼吸をしようとする。
到底叶わないジェヒョンに勝とうとしてしまう。
そんなことをしようとしている事くらい、ジェヒョンには分かってしまう。



キスの最中鳴り響くチャイムの音。
生徒達がダル〜、と愚痴を零す声。
そして一番響く水音とリップ音。



チャイムが鳴り終わるのと同時に終わるキス。
二人の唇の間にキラリと光るどちらのかなんて分かるはずもない唾液が伸びた。



「あ、ぁ、ジェ、ヒョン、せんせ、」



「可愛いドヨン先生、夜まで我慢できるでしょ?」



先生なんだから、と付け加えてそっと頬を撫でる手つきは相変わらず厭らしい。




「夜、ドヨン先生が来てくれるの待ってますね。」




そう言って頭をポン、と撫でた。




退勤まで、あと4時間。

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