ハルヤ , side
あれから自宅に辿り着いたオレと少女は、というと
買った物を早急に冷蔵庫・冷凍庫に詰め終え
前々から冷蔵庫に入っていたものでご飯を作る事に
そう言って意気込み、袖を捲り上げる少女を見て
不覚にも少し、可愛いと思ってしまった……
『確か卵はあったはず、あとは…』
等と独り言を溢す彼女の後ろで
謎の罪悪感に蝕まれたオレは、
気づけば自然と頭を抱えていたのだった。
それから暫く経って、
美味しそうな匂いが部屋を包む頃……
何かを焼いている音、揚げている音、
冷蔵庫を開ける音、電子レンジの音_____
少女の奏でる、食事を作る音しか
聞こえない部屋の中で、鈴の音の様な声が響いた。
『特に無ければ、別に良いんです……
急にこんな事言って迷惑でしたよね、、』
段々と小さく弱まる声に、
「たとえば?」と態とらしく
質問を投げ掛けるオレは些か性格が悪いようだ。
『明日のご飯はこれが食べたい、とか
買い物に付き合って欲しい、とか
もっと大きな望みでも!
私に出来る事なら何でも…』
そう続ける彼女に、つい反射で
「何でも?」と念を押す様に繰り返す。
また洞傑やフクロウと暮らしたい…。
気づけば口から溢れ落ちていた、オレの本音。
沈むような暗い雰囲気に、
咄嗟にしまった____と思った……
そう思うや否や、また勝手に口は動いていた。
早口でそう取り繕い、彼女の返事も聞かず
「外の空気を吸いに、少し出掛けてくる」
と口に出し急いで玄関へと走った____
途中、
オレの背中目掛けて
そんな言葉が聞こえた気がしたが、
柄にも無く取り乱し家を出たオレには、
真実を知る術はとうに無かった______
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーー
ーー
そう思いながら必死に足を前に進めれば
不思議と、あの公園に辿り着いていた______
一息ついたところで
不意に後ろから聞こえた声の方向に、
ゆっくりと振り返ってみれば…
どこか見覚えのある少女が立ち竦んでいた。
その目は相手をしっかりと捉え、
強気な態度を取りつつも、
頭では本能的に " 逃げなければ " と考えていた…
何だか胸騒ぎがする、
心の何処かで違和感が残っているんだ…
理由は分からんが、何かが奇怪しい…、
一時の静寂を初めに切り裂いたのは
松田 忍、と名乗る得体の知れない女_____
あの少女とこの女は見た目からして
同じくらいの年だが、雰囲気が全く違う…
普通、こんなに大人びているものなのか…?
思考を巡らせ、言葉を詰まらせたオレに
女が差し出したのは、
鈍く光る黒色の勾玉だった____
妙に古そうなソレは中央が僅かに黒く濁っていて、
綺麗な朱色の紐で丁寧に結ばれている…
精巧に細工されている金具は、
未だキラキラと輝いていて
きっととても大切に保管されていたのだろう、
古めかしくも神秘的なその光景が目についた途端、
自ずと思考は止まり、
気づけばソレを受け取っていた後だった…
一部濁っているものの、
黒光りする勾玉は確かに綺麗で、
暫くの間オレはソレから目が離せなくなった…
その後、女から持ち掛けられたのは
明らかに奇怪しな提案だった……
それは、オレの願い事を叶えてあげる…
その為に協力させて欲しい、というもの_________
これといった証拠は一つも無いが、
それでもオレはコイツの言っている事に
確かな違和感を覚えた……
" 話を聞くだけ聞く… "
これが今オレに出来る、最良の策だ…
表情は柔げに、言葉は変わらず、、
これなら妙に怪しまれることもないし、
隙を作るタイミングまで時間を稼げる…!
運が良ければ、相手の真意まで分かるかもしれない
いざとなれば、断れば済む話だし、
それでも駄目なら実力行使も厭わない……
手にした勾玉をもう一度見てみると心做しか、
ソレは先程より更に濁っている気がした____
ん……?冷静になってみて、とある事に気づく。
突如、聞こえた大声で振り返ったと同時に
背を撃つように突風が吹き荒れた______
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーーーー
ーーーーーーー
ーー
to be continued ...













編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。