______夜中。
彼女はキョトンとした顔をして、いつも通り私の上着を受け取ろうとした。
伸ばされた腕を、手で勢いよく振り払った。
叩かれた衝撃で、彼女の軽い身体は床に倒れた。
怯えた様子のあなたの細い腕を掴み、ぐっと顔を近づけた。
小刻みに震えている。
大きな目が、何を言いたいのかわからないと訴えていた。
小さな顔を叩き飛ばして、彼女はまた床に倒れた。
腕は青アザができている。
自分を抑えることが出来なくなっていた。
彼女にこんなことをしたいんじゃない。
こんな顔をさせたかったんじゃないのに。
何も言わない。
それに無性に腹が立って、蹲る彼女の腕を引っ張った。
よろよろと立ち上がり、怯えた目で私を見る。
お構いなしに、それを持ち上げた。
私の部屋の扉を開け、乱雑にベッドに落とした。
あなたの服に手をかけると、元々白い顔がさらに蒼白になった。
命乞いに似たそれを言って欲しかったのでも、謝って欲しかったのでもない。
だって彼女は何一つ悪くないのだから。
私だってそれくらいわかっている。
ただ……否定して欲しかった。
「レインの弟を愛しているのか」というあの質問を否定して欲しかった。
「あなたは勘違いをしただけで、私はあなたを愛しています」と、そう言って欲しかっただけだった。
たとえそう言われても、私は信じなかっただろう。
オーターさんあんた、あの親父の血を継いだことと、あんな酷い教育を受けて育ったんだから、虐待癖あるだろ……
だって弟子の訓練に殺す気で攻撃する奴なかなかいないよ?













編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!