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第1話

Prologue
1,896
2024/07/15 02:00 更新



深澤辰哉
とってもいい場所...



改札を抜けて、大きなボストンバッグを持ち上げ直すとその熱気に圧倒される。
夏真っ盛り、さすがにこの格好はまずかったかと後悔し始めた。周りにいる地元の女子高生らしい子達は既に半袖で、見ているこちらが余計に暑くなるのだ。


深澤辰哉
んー...来ねぇなぁ



確かにメールでは同居人が18時きっかりに迎えに来ると言っていたのに、もうすでに1時間は過ぎている。時間にルーズな奴は嫌いだ、お金にルーズならまだいいのに。

文句と不満は募りに募って、俺は諦めて駅から出てみることにした。

一歩ふみだして辺りを見渡すと一面大海原。海が見えるなんていいところだ。



深澤辰哉
(雪男荘までの道は...)




深澤辰哉、18歳の高校三年生。
母は事故で他界。父親はアメリカに栄転。
日本語以外、英語なんて中学生レベルで精一杯の俺は一人日本に残ることを決意した。

そして今に至るわけだが、父の幼馴染という宮舘さんが営む下宿屋"雪男荘"に引っ越すことになった。




深澤辰哉
あっ...!


俺の地図!!(※紙の切れ端)


岩本照
....



風に飛ばされた俺の命並みに大切な地図は、強面の男性によってキャッチされた。


深澤辰哉
す、すみません笑
飛んでいっちゃって、ありがとうございます
岩本照
雪男荘...もしかして入居者?
深澤辰哉
あ、はい。今日来たばかりで笑
岩本照
ふーん...



どっちつかずで意図のわからない返事に戸惑いながら、彼の握っている地図を掴む。


岩本照
なに?
深澤辰哉
いや、ありがとうございます。キャッチしてくれて...
岩本照
だから、その手は?
深澤辰哉
返していただこうかと...
岩本照
なんで?
深澤辰哉
なんでって...


どれだけ引っ張ろうとも離してくれない強面さん。ずっとニコニコと笑っているからそれもそれで怖いし、早く返してくれないかと訊いてみるが「なぜ」の一点張り。


岩本照
行かなくていいの?
深澤辰哉
だから、その地図...!
岩本照
嗚呼...これ地図なんだ


ごめんね、とすんなり返してくれるとくるりと身を翻して何事もなかったかのように道を引き返していく。

進行方向は完全に同じ。
なんだか気味が悪いのでさりげなく追い越してみるけど、後ろにいる気配もなんだか怖い。




深澤辰哉
(てか着いてくるしっ!!) 


歩幅は一定で、距離も取れている。
怖いほどに道は同じ。



深澤辰哉
あ、あの何か?
岩本照
別に



そして沈黙。

なにが別にだよ、着いてくるなっ!
ただでさえ強面で怖いってのにずっと後をつけてくるだなんてなにか俺しました!?なんだかだんだん腹も立ってきた...。




深澤辰哉
....なんで着いてくるんですか
岩本照
着いてくる?追い越したのはあんたでしょ
深澤辰哉
え、
岩本照
俺は道案内役、連絡来なかった?
深澤辰哉
いや、だとしても時間が...
岩本照
こっちだって慈善事業じゃねぇの。
完全ボランティアなんだから感謝してほしいね



日の光を避けるように日陰に連れ込まれ、そのまま壁ドン状態。


岩本照
俺は"岩本照"。あんたの同居人だ
深澤辰哉
同居人!?
岩本照
お願いだから一つだけ守ってくれ、








「プライベートに干渉しないでね、辰哉くん?」

















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