改札を抜けて、大きなボストンバッグを持ち上げ直すとその熱気に圧倒される。
夏真っ盛り、さすがにこの格好はまずかったかと後悔し始めた。周りにいる地元の女子高生らしい子達は既に半袖で、見ているこちらが余計に暑くなるのだ。
確かにメールでは同居人が18時きっかりに迎えに来ると言っていたのに、もうすでに1時間は過ぎている。時間にルーズな奴は嫌いだ、お金にルーズならまだいいのに。
文句と不満は募りに募って、俺は諦めて駅から出てみることにした。
一歩ふみだして辺りを見渡すと一面大海原。海が見えるなんていいところだ。
深澤辰哉、18歳の高校三年生。
母は事故で他界。父親はアメリカに栄転。
日本語以外、英語なんて中学生レベルで精一杯の俺は一人日本に残ることを決意した。
そして今に至るわけだが、父の幼馴染という宮舘さんが営む下宿屋"雪男荘"に引っ越すことになった。
俺の地図!!(※紙の切れ端)
風に飛ばされた俺の命並みに大切な地図は、強面の男性によってキャッチされた。
どっちつかずで意図のわからない返事に戸惑いながら、彼の握っている地図を掴む。
どれだけ引っ張ろうとも離してくれない強面さん。ずっとニコニコと笑っているからそれもそれで怖いし、早く返してくれないかと訊いてみるが「なぜ」の一点張り。
ごめんね、とすんなり返してくれるとくるりと身を翻して何事もなかったかのように道を引き返していく。
進行方向は完全に同じ。
なんだか気味が悪いのでさりげなく追い越してみるけど、後ろにいる気配もなんだか怖い。
歩幅は一定で、距離も取れている。
怖いほどに道は同じ。
そして沈黙。
なにが別にだよ、着いてくるなっ!
ただでさえ強面で怖いってのにずっと後をつけてくるだなんてなにか俺しました!?なんだかだんだん腹も立ってきた...。
日の光を避けるように日陰に連れ込まれ、そのまま壁ドン状態。
「プライベートに干渉しないでね、辰哉くん?」
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編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。