キッチンに立ってビーフシチューをコトコト煮込みながら、ここ雪男荘の長男である宮舘涼太はそう言った。
共有スペースの一角にあるソファーで寝転び、怠そうにそう言うのは彼の幼馴染である渡辺翔太。リモコンを取り、テレビをつけると左上のデジタル時計は既に19時半と表示していた。
ガスコンロの火を止め、エプロンを取ると宮舘はキッチンから出て大きな窓ガラスの向こうを眺めた。渡辺の言葉に「翔太は面倒くさがり屋だね」なんて皮肉ると、彼の反論を聞かずに部屋を飛び出した。
こちらに向かってくる男に手を振りながら声を掛けると、凄い形相で振り返ってきた。
丁寧にお辞儀をすると、深澤もゆっくりお辞儀をして「こちらこそ」と言った。
さらさらの茶髪に色白な肌、それに丸い瞳は彼の父親の面影を感じさせる。
これから同居するというのにそれは悪い知らせだと少し落胆する。でも、第一印象から最悪な彼になにかを期待するほうが無駄だと悟った。
宮舘がそう言って視線を上げると、いかにもレストランっぽい建物がそびえ立っている。
「さあ、入って」と言いながらドアを開けると、視界いっぱいにアンティーク調の内装が広がった。なんというべきか、西洋チックな見た目だがどこか親しみやすさを感じる。
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編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。