「えー、転校生の深澤辰哉くんだ」
とはいえ、昨日から張り切ってはいたもののマンモス校一クラスの人数を前に元気に挨拶なんて到底無理なわけで。
時期外れの転校生に男女問わずざわついている。
斜め前に視線をずらすと見知った奴の顔。
一人でも知り合いがいると、心強いってもんだよな。
「じゃあ、深澤は窓側一番うしろな」
緊張の教壇を離れると一気に肩の力は抜けて、横から吹き込むそよ風がとても気持ちよく感じる。比較的涼しい今日は俺の新天地デビューに相応しい。
右を向くと冷たくなった椅子がある。
昨日同居人は帰ってこないし、隣の席の奴は休みだなんてとことん隣に縁がないのだろうか。
ふむ、素行が悪い不良タイプってところか。
暴力は無理だぞ、暴言も反対!
「またか、岩本。寝坊か?言い訳ならあとで職員室で聞くぞ」
ガラっという音とともに教室に現れた男。身長は高く、ガタイのいい強面の見知った顔だ。
帰ってこない朝帰り男!
初対面に失礼な岩本照!
なんでこんなところにいるのだ。
ははっ、と嘲笑うかのようにこちらを眺めながら隣に着席する。よろしくな、なんていいながら手を振るとそのまま突っ伏す。
なんて身勝手な男なのだろう。
突っ伏したまま顔をこちらに向けるとにやにやしながら「よろしくね」と口パクで伝えてくる。
なにがよろしくだ、こちらとしては願い下げ!
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編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。