ウォヌ Side
「ウォヌヒョン、朝ごはん食べた?」
「……ん。」
「その返事って、食べたってこと?食べてないってこと?」
「…………。」
「ほらね、やっぱり食べてないじゃん。」
ミンギュはため息をついて、俺の目の前に温かいスープを置いた。ミンギュは誰に対しても口うるさいけど特に俺に対しては酷い気がする。
「オフだしゆっくり食べる時間あるのにご飯抜かないでよ、」
俺はその湯気をぼんやりと眺めた。
それと同時にミンギュの存在に感謝した。
「ミンギュ、スプーンない」
「ヤー!ヒョン!それぐらい自分で取ってよもう!」
そういいつつもミンギュはスプーン持ってきてくれる。
同じ部屋になってから、こんなことが増えた。
というより、俺がミンギュと離れてから、また不規則な生活に戻ってしまっただけかもしれない。
元々、俺は一人でも問題なく生活できるタイプだった。食事は適当に済ませるし、夜遅くまで本を読んだりゲームをしたりしてしまう。でも、ミンギュと同じ部屋だった頃は、彼が「ヒョン、ちゃんと食べて!」とか「もう寝る時間だよ!」とか、うるさいくらい世話を焼いてきたから、自然と健康的な生活が身についていた。
なのに、別々の部屋になってからは、それがなくなった。
自由になったはずなのに、気づけばまた食事を抜くことが増え、夜更かしも当たり前になった。
そして今、ミンギュはまるで昔に戻ったかのように、俺の世話を焼いてくる。
「……ミンギュ、俺は別に子供じゃないんだけど。」
「そういうこと言う人が、朝ごはん抜いたりする?」
「……」
「ヒョン、俺と離れてからまた不規則な生活に戻ってるんだもん。俺が見ておかなきゃ天下のSEVENTEENがそんな不規則な生活してるってバレたらはぁ。」
ミンギュがじっと俺を見つめる。
俺は思わず視線を逸らした。
「……しつこい。」
「俺が?」
「うん。」
「ふふっ。」
ミンギュが笑った。
「何笑ってんだよ。」
「だって、ヒョンが俺にこうやって言われるの、そんなに嫌そうじゃないから。」
「……気のせい。」
「そうかぁ?」
ミンギュはニヤニヤしながら俺の隣に座った。
「それよりさ、今日ジム行こうよ。」
「え。」
「最近、あんまり行けてなかったでしょ?ヒョンも一緒に行こうよ。」
「……いや、いい。」
「ほらまたそうやって運動サボる。俺と一緒に行ったら、ちゃんとやるでしょ?」
「ウジと行くし…。」
「ヒョンはウジヒョンについていけんの?」
「絶対俺よりスパルタだよ」
何も言い返せなくて、俺はスープをすする。
「ね、行こうよ。」
「……わかったよ。」
「じゃあご飯食べたら着替えて」
ミンギュが満面の笑みを浮かべる。
その表情を見て、胸が少しだけ苦しくなった。
(お前は……なんでそんなに俺に構うんだよ。)
昔のことを思い出す。
付き合っていた頃と、何も変わらない。
むしろ、変わらないからこそ、今の関係が余計にややこしく感じる。
俺たちはもう恋人じゃない。でも、ミンギュの優しさや気遣いは、以前と何も変わらない。
いや、もしかしたら、それ以上に優しくなっている気がする。
「……なんでそんなに俺に構うの。」
思わず呟いていた。
ミンギュは少し驚いたように俺を見つめたあと、困ったように笑った。
「んー……なんでだろうね?」
「俺のこと、放っといてもいいのに。」
「うーん……無理。」
即答だった。
俺は息をのむ。
「ヒョンのこと、放っとけるわけないじゃん。」
ミンギュは、何気ないように言う。
まるで「当たり前」だとでも言うように。
その言葉が、心の奥にじんわりと染み込んでいく。
「……ジム、また終わったら飯作ってくれる?」
「えっ?ヒョン、食べるの?今日もてっきり食べないのかと」
「……別に。ちゃんと食べなきゃうるさいしお前。」
「うん美味しいの作るから。」
「その前にプロテインだけどね。」
俺がそっけなく言うと、ミンギュは笑いながら俺の背中をポンポンと叩いた。
「ヒョンって、ほんと素直じゃないよね。」
「はぁ。」
でも、俺の胸の中には、さっきより少しだけ温かい何かが広がっていた。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。