あの子が、
どこかに消えてしまった。
家を追い出しただけ。
私が良くされていたように、
家を…
あの子がいなくなった喪失感よりも、
やっと自由になれる開放感の方が、
ずっと大きかった。
あの子が、私の元夫に
性加害を受けていることは知っていた。
どれだけ怖くて、つらかったんだろう。
それでも私は見て見ぬふりしかできなかった。
私も、こわかった。
馬鹿みたいに、
狂って、遊んで、汚して。
体を売っているのに。
嘘の喘ぎ声。
これであの子を養ってきた。
生きてきた。
気持ちよく魅せるのは、
簡単だった。
ごめんね、あなた。
ごめんなさい、ごめんなさい。
あの人に良く似ている、その顔。
あなたが死んだら、
私も心置きなく死ねるのに。
あなたが生まれてこなかったら、
私は、まだ幸せなはずだったのに。
何が間違っていたのかわからなくなってきて、
泣くしかできなかった私を、
あの子はどんな目で見ていたのだろう。
あの子に縋り付いて泣いた私を。
いつか、幸せになれる日を願って。











編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!