感情表現に乏しいけれど、
しっかりと、
幸せを感じていた。
けれど、あなたは、
いつこの幸せが壊れるのかを
ずっとずっと、危惧していた。
やっとあなたが笑うように、
そして願望を言ってくれるように
なってきた頃。
あなたは右手と手を繋ぎながら
3人に笑いかけていた。
ありがとう、と。
あなたはそこまで言って、
驚いた顔をした。
あなたの視線を辿ると、
随分と疲れた様子の女性がいた。
そう、まるで、
人生に疲れたかのような______
その女性は、
小汚い、50代くらいの男性を見かけると、
ぱあっと顔を明るくし
声をかけた。
その笑顔が作り物だとは、
すぐにわかった。
あなたはふるふると顔を振った。
なんとも言えない、
気まずい空気が流れた。
あなたは右手の手をぎゅっと握りながら、
母親たちが入って行ったホテルの入り口を
悲しそうに、見つめていた。











編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!