渋谷についたら時すでに遅し。
ピンクと青の液体が地面を彩っていて、
スクランブル交差点にはサッカーボールが膨らんでいた。
今から向こうへ行ってる時間もなさそうだったので、
一番近くにいた哀ちゃんが引っ張っていたサスペンダーを手に取る。
陣平さんは呆気に取られた顔で
サスペンダーを引っ張るのを手伝ってくれる。
たしかここは崩れちゃう…
もっと丈夫な柱に、ってシーンがあったはず。
私と哀ちゃんの力に陣平さんの力が加わり、
一気にぐい、と引っ張られる。
私が崩した体制を
サスペンダーを引っ張りながら陣平さんが支えてくれた。
一人で掛け声をかけて引っ張っていると、
外国人らしき人がたくさん来る。
その人たちと哀ちゃんが何やらロシア語で会話をした。
私の掛け声にかぶせて陣平さんも声を絞り出す。
原作通りなら私達がいなくても助かるはずなのに、
一人でも足りなきゃダメな気がする。
哀ちゃんが探偵バッチに向かっていった次の瞬間、
──月をバッグに、コナンくんが飛んだ。
思わずその場にへたり込んだ私の顔を覗き込むように、隣で陣平さんが中腰になった。
なんかもう色々疲れた…
顔を上げると、遠くでミストのようにまかれている
緑色の中和剤。
差し出してくれた陣平さんの手を取って
私は建物へと向かった。
屋上に行くと、
零さんが下の様子を眺めていた。
陣平さんも少し頬を緩める。
とりあえずこの事件は一件落着した。
不意に零さんが呟いたので、
反射的にオウム返しをしてしまう。
そういえば…部屋の中に置いてきてしまったな…
でも…あのことに気づいてしまったから
もうつけるのが怖くなっている。
また、どこかに飛んだら……
そんな嫌なことばかり、頭をよぎってしまった。













編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。