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第12話

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2025/08/06 17:59 更新





ゴリ……ゴリ……




薬研の薬草をすりつぶす音が、場にいる2人の沈黙を緩和させる



一人は真剣に薬研を動かし、もう一人は包帯の巻かれた腕を擦りながら、薬研を動かすその人の顔を見つめる。



善法寺 伊作
どうかした?あなた




向けられる熱い視線に気が付いた伊作は、手を止め疑問を浮かべてこちらを覗く



あなた
あっ、ごめん…
なんでもないよ





不器用に口角を上げて見せると、きゅっと腕の包帯を掴み、俯いてしまう





善法寺 伊作
……そっか




あなた、最近元気がないようにみえるのは、気のせいかな…


ついさっき怪我したっていう腕は、本人が言うには不注意だと言っていた。


忍術学園敷地内の綾部喜八郎の落とし穴に躓いたらしい。どうもあなたらしくない




善法寺 伊作
…あ、ねぇ
最近留三郎とはどうなの?




重い沈黙をなんとか突き破り、苦し紛れの話題を
そのぽかんとした顔のあなたに投げかける

あなた
え…?食満と………?




ただの場繋ぎが目的では無いさ。


先日、あなたと留三郎の仲を取り持って随分経つ


どうか以前より仲が深まっていて欲しいと願いを込めて、やたらと頭を悩ませるあなたに期待の眼差しを向ける


あなた
う〜ん……あ、


あなた
この間食堂で立ち会ったら、僕の隣の席に座られた


あなた
迷惑じゃないけど、特別話もしなかったから……
どちらかと言えば変わらず…かな




話を聞いた僕は、思わず感動してしまった


善法寺 伊作
何言ってるの!?
進展してるじゃないか!


善法寺 伊作
留三郎が寄り添ってくれた事も、
あなたがそれを受け入れていることも!


善法寺 伊作
よかった……
ふたりが僕の知らない所で
険悪な仲に戻らないかって心配してたんだ




あと2人が、それほど子供じみていないことは百も承知だ。



けれど



善法寺 伊作
僕……僕の好きな君たち二人は仲良くあって欲しいんだ



いざ口にしてみると、なんだか恥ずかしいね


と、照れ臭くて居た堪れないままあなたへと目線を向ける




僕の返事を聞いて、さっきより更に目を丸くしているあなた


あまりの驚きようについ笑みがこぼれてしまう


善法寺 伊作
ふ、ははっ、
そんなに驚くことかな?


あなた
だ、だって………




驚きで開いて閉じない口をあわあわと震わせ、何か言いたげなあなた



僕にはどうしてそこまで驚くのか、なにか気に障るような発言をしたのか、分からなくて首を傾げるしかなかった


あなた
いや、なんでもないよ…、
気にしないで



善法寺 伊作
?…そう?
あなたがいいならいいけど



あなたがゆっくりと首を縦に動かすと、再び作業途中の薬研へと視線を落とす




そしてまた、二人の間に沈黙が訪れた




特別気まづい空気ではないが、話す話題が無くなると、さっきのあなたの反応が気になり始める


僕なにか言ったかな…?留三郎との話を聞いて、

その進捗ぶりに喜んで…それから……




善法寺 伊作



善法寺 伊作
あなた、もしかして……




心做しか紅色に染まるあなたの頬。


僕の感じていた疑問の答えが欲しくて、次に口を開いた瞬間


ドタドタ


鶴町 伏木蔵
善法寺伊作先輩〜!



ガララ と勢いよく開かれた戸の向こうには、


同じ委員会の1年ろ組鶴町伏木蔵が汗だくで僕の名前を呼んでいた


善法寺 伊作
伏木蔵?どうしたの?


鶴町 伏木蔵
向こうで、綾部喜八郎先輩が掘った落とし穴に、
用具委員会の方達が次々と落っこちていて〜!



善法寺 伊作
なんだって!?
それは大変だ、急いで向かうよ!



手際よく救急箱の中身を確認し、床に広がっている道具や薬草を元あった場所へと戻す


忙しく準備を進める僕たちを、ひとりでじっと眺めるだけのあなた



あなた
い、伊作!


あなた
僕も手伝う。



善法寺 伊作
……!あぁ!
助かるよ!



場所を案内してくれる伏木蔵に、別の落とし穴を警戒しながら後ろに続く

あなたが手伝ってくれるなんて思わなくて、少し驚いたな……

きっと昔のあなたなら考えられなかったかも




もしかして、留三郎と顔を合わせたかったとか?

……まだ有り得ないかぁ



次々とありもしない想像を頭で考えていた伊作は

後に不注意から行き道中の落とし穴へと足を滑らすのだった



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