放課後、教室に残っている俺は、前の席座ったなつの言葉にそういえば、と思い出す。
明日だったな、花火大会。
まぁたしかに、部活の奴らには誘われたけど。
納得したように頷くなつ。
今教室にいるのは俺となつだけだから、周りを気にせず話せる。
呆れた声に、顔が熱くなるのを感じてふいっと顔をそらす。
なつの言葉に、一瞬きょとんとする。
けどすぐに意味を理解して、目線を落とした。
ただ……とぼそぼそと続ける。
そんなの決まってるだろと思いつつ、口を開く。
あの笑顔といい、性格といい。
全部が全部、愛おしい。
こんなに誰かを好きになるのは初めてで、正直自分の気持ちにも驚いてる。
誰にだって、渡したりしない。
絶対俺のこと好きにさせる。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!