真剣な瞳に嘘はつけず、黙ったまま俯く。
しばらくすると、ため息をついたいるまくんが、ぼそっと一言。
……まじかよってことは、やっぱり…
遠慮がちに聞くと、いるまくんは私を見た。
ばちっと、目が合う。
いるまくんに手を引かれたまま、歩き出した。
いや気まず……?
連れてこられたのは、花火大会の会場から少し離れた小さな公園。
私といるまくん以外おらず、貸し切り状態だった
こくっとうなずくと、隣で大きくため息をついた。
否定しないってことは、まじなんだ……
いるまくんは、ぐっと言葉に詰まると、しばらく視線をさまよわせ———
ため息をついてから、私を見た。
目を見てはっきり言われると、さすがに照れる。
さりげなく視線をそらした。
むっとしたようないるまくんに促され、渋々口を開く。
最初の方はほんとにショックだったし
そこまで言って、軽く睨むと。
きまり悪そうに、いるまくんが顔をそらした。
けど、といるまくんが顔を背けたまま続ける。
この人、急に何言って…!?!?
思わず声を上げる。
急にふっ切れたように声を上げたいるまくん
唐突なマシンガンに困惑が隠せない。
急に図星をつかれ、余計赤くなるのを感じる。
いるまくんはふっと微笑むと、ゆっくり顔を寄せてくる。
こんなに優しいいるまくんの表情見たことなくて。
後ずさっても、どんどん近づいてくるいるまくん。
耳元で、甘く囁かれる。
吐息混じりの低音ボイスが響く。
いつのまにか、柵に追い詰められ、いるまくんとの距離が一気に近づく。
「我慢、できねぇわ———」
いるまくんの顔が、ゆっくり近づいてくる。
耐え切れず、ぎゅっと目をつむる。
すぐ目の前にいるまくんの気配を感じた、その瞬間。
パーーーンッ!!
二人の距離に割り込むように鳴り響いた、大きい音。
見上げれば、綺麗な花が咲いていた。
花火が始まったんだ。
思わず、呟く。
ゆっくりと、いるまくんの身体が離れたことに、ほっと息をつく。
チュッ
その瞬間、可愛いリップ音とともに頬に落ちた、柔らかい感触。
それを認識した頃には、いるまくんは顔を離し
いたずらっ子のような笑みで、私を見ていた。
"ほんと可愛い"
その言葉は、花火の音に隠され、私の耳には届かなかった。
———今までと違う何かが、始まりそうです。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。