夜

気を抜いた隙に包帯はコロコロ転がってしまった

お母さんの部屋のドアから光が見えた

ドアを開けた…

その瞬間

綺麗な姿のお母さんがいた

お母さんはいつも化粧なんてしてないし髪もクシヮクシヤ 服なんていつもはゆるゆるのワンピースなのに 今は化粧してるし 髪もひとつにまとめてる 服も白くて綺麗なワンピース 靴も透明で綺麗な靴  お父さんはこんなのプレゼントしない

その一言でわかった

母は

私を

捨てる気だ

そう思ったその瞬間

火事が起こった

ロウソクの火が何かに移ったのだ

私は必死で火を消そうとしてるこの女を

火の中に

蹴り落とした

その女は何分たってもいまだもがいている

初めて言葉にした言葉だ

でも

お父さんは私を見てない

お父さんはずっとずっとこの女を見てる

初めて叱ってくれると思った

なのに

…だから

私は

お父さんも火の中に蹴り落とした

お父さんはもがきながら女に抱きついていた

ﾊﾟﾁﾊﾟﾁﾊﾟﾁ

なんで？

この家には何も残ってないのに

私は火を消すのをやめて路地裏に出た

視線を落とすと

あの時ここにあった

黒猫だ

あの女とお父さん…