嵐が来るなんて、誰も思っていなかった
——少なくとも、ドアが開くその瞬間までは
🚪
カラン、と控えめなベルの音
自動ドアが開いて、外の光が一瞬だけ差し込む
店内の空気は変わらない
洋楽、ドライヤー、笑い声
誰も顔を上げない
……一人を除いて
夢主は、鏡越しに一瞬だけ入口を見る
立ち姿
歩き方
空気の取り方(?)
うん、
——なんか、知ってる
理由は説明できない
ただ、オタク特有の“嫌な勘”が静かに鳴った
受付スタッフが対応する
声、
あなたの下の名前の手が、一瞬止まる。
うなも、鏡越しに目を見開いた
でももう遅い
受付が予約表を見る。
店内が、ほんの一拍静かになる
スタッフ数人が、ゆっくり夢主を見る
顔色一つ変えず、ハサミを置く
客が歩いてくる
距離が縮まる
椅子に座る
鏡越しに、目が合う
——完全に、気づいた
帽子の影から見える目
実写配信、ライブで何百回も見た目(?)
心の中で叫んだ瞬間、
あっきぃも、同時に察した顔をした
一瞬だけ、口元が動く
どうやら、どちらとも
誰なのかを察したもようです
普通の会話
普通の美容院
なのに
FF客のスマホが、膝の上で震える
スタッフの一人が、奥で口を押さえる
別の席のお客さんが、ちらっと見る
——誰も確信はしてない
でも、
“何かが起きてる”ことだけは全員分かってる
シャンプーに案内する直前
あっきぃが、鏡越しに一言だけ
一瞬だけ、目が合う。
それ以上は、何も言わない。
でもFF客は、すでに限界だった
——平和は、まだ壊れていない。
ただ、
確実に“音を立てずにヒビが入った”














編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。