※あなたの下の名前ちゃんは美容院で働いてます!!
店内は、いつも通り平和だった
平日の昼下がり
大きな窓から入るやわらかい光と、
スピーカーから流れる少しチルな洋楽
ドライヤーの音が一定のリズムで響いて、
雑誌をめくる音、ハサミの軽い音が混ざる
それを言うのも、もはや日常
予約表は今日もぎっしりだ
カット中
鏡越しに見えるのは、いつもの仲良しFFさんのうな
何気ない会話
でもそのやり取りに、周りの
スタッフがチラッと視線を向ける。
そう、
あなたの下の名前はこの店で、指名が取れないことで有名な美容師
特に——
ライブ前
予約開始と同時に埋まるのが当たり前
「推しの現場前は夢主さんにお願いしたい」
それが、半ば常識みたいになっている
FFが客として来ることもあるし、
スタッフからも憧れられている
可愛くて、落ち着いていて、距離感がちょうどいい
話しすぎないのに、オタクの心はちゃんと分かってる
——なのに
不思議なことが、ひとつだけあった
AMPTAKxCOLORSのライブ期間だけ
なぜか、夢主は絶対に店にいない。
スタッフの間では、完全に“謎”
「毎回この時期いないよね?」
「有休? でもタイミング良すぎない?」
「実家とか?」
誰も答えを知らない。
夢主は、都内のちょっとおしゃれな美容院勤務
サングラスをかけた芸能系っぽい
お客さんが来ることも珍しくない
そんな軽い認識で終わるはずだった。
理由は簡単
・オタクに優しい
・話振りがうまい
・でも自分の推しは絶対に言わない
このやり取りを、何百回も繰り返してきた
ドライヤーの音
洋楽
鏡越しの笑顔
今日も平和
本当に、完全に
──この時は、まだ
店内BGM、洋楽
ドライヤーの音
笑い声
何も起きない、いつもの午後
嵐が来るなんて、誰も思っていなかった















編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。