第23話

エピローグ:ハズビンホテル
1,502
2024/04/24 21:00 更新
1年後ーーーーーー地獄。
オーナー
それでは皆様!
永らくお待たせ致しました!
オーナー
半年に一度の闇オークション!
宝石、芸術品、武器兵器、奴隷、機密情報までなんでもあり!
オーナー
地獄で最もヤバイ品々のそろう宝島へようこそ!
ワーーーーーー!!!
パチパチパチパチパチ!!!
オーナー
それでは! 最初の品はこちら!
《天使の武器》!
最初のお値段はこちらの金額から
スタート!
ああ、さすが地獄だけあっていろいろあるのね。もう法律とか倫理とかクソ無視でヤバイものが次々競り落とされていくわ。

………でも、あのインプの奴隷はかわいそう。
まだ、子どもじゃないの。
オーナー
そぉれでは! 
本日ラストにして最大の目玉商品!
これが目当てで来られた方も多いのではないでしょうか!
オーナー
かの恐るべき《ラジオデーモン》の
契約者にして、
オーナー
1年前に彗星のごとく地獄へ現れた
人気MC!
オーナー
《ラジオデーモンガール》!
正真正銘の本物にございます!
おおおおおおおおおお!!!!
スポットライトがまぶしいなあ…。

花で飾られた檻の中に、お姫様よろしく囚われている私の姿に、オークション客は大興奮。
モブ客
キャーーーー!
私、彼女のファンなのよ!
絶対に競り落とすわ!
モブ客
マジかよ! あの《ラジオデーモン》の契約者だと!?
モブ客
今から《ラジオデーモン》の悔しがる顔が目に浮かぶぜ! オレがたっぷり可愛がってやる!
うわー……すごい。見たことのない額になってる。
オークションは白熱し、私にはすごい値段が付けられた。
オーナー
本日の最高額が出ました! 
他にどなたかいらっしゃらなければ、これにて落札ーーーーー。
そろそろかな?
私は魔力で手の中にマイクステッキを出した。
アラスターとお揃いのデザインだけど、リボンやハートのついた可愛いデザインだ。
あなた
えー! ラジオの前の皆様!
お待たせ致しました!
あなた
エンターテイメントのお時間です!
マイクに声を乗せ、檻の中で優雅に一礼してみせる。
オーナー
は? え? お前、何をーーー
あなた
《ドッキリ★わざと捕まって
闇オークションに潜入してみた!》
はいかがでしょうか?
あなた
MCはこの私《ラジオデーモンガール》ことあなたのカタカナで名前がお送りいたします♥️
あなた
オークションの白熱!
欲望剥き出しの醜い歓声!
扱われるヤバすぎる商品たち!
あなた
お楽しみいただけましたでしょうか?
オーナー
ま、まさか……最初から全部
ラジオ放送していたのか!?
あなた
オーナーは今、
ようやく気づいたようです。
アホですね(笑い声の効果音)
オーナー
テ、テメエ! 商品の分際で何を勝手なことを! ぶっ殺してやるぞ!!!
あなた
あッ……その言い方はーーーー
どおおおおおおおおおおおん!!!!
アラスター
私の可愛いあなたのカタカナで名前を……殺すだと?
誰の女だと思っているのだね?
オーナー
ひいいいいいい!!!
ラ、ラジッ………
《ラジオデーモン》!!?
壁をぶち破って現れたアラスターは、悠然とオークションを蹂躙した。
アラスター
HAHAHAHA! 
リスナーの諸君!
よぉく楽しみたまえ!
アラスター
私の最愛のパートナーをさらって
売り買いしようとした
愚かな連中の断末魔を!
オーナー
ぎゃあああああああああ!!!
触手が会場を破壊しつくし、スタッフやオークション客の悲鳴が響く。

その隙に、私は影になって檻の隙間から逃げ出した。
オーナー
あ! あの女を逃がすな!
あの女を人質にすればーーー!
バサッ!
ハスク
ハハハッ!!!
テメエらの相手は俺様だ!
ぞろぞろと迫る敵の前に、赤い翼を広げてハスクが立ちふさがる。

その両手に手品のようにトランプが現れ、それは鋭い刃物のように投げつけられた。
さらに、ダイスを手の中で転がし、投げるとそれは爆薬となって敵を吹き飛ばした。
もう会場は大パニック!
後はこの混乱に紛れて逃げるだけ……。
オーナー
オラ! このウスノロ!
さっさと来い!!
と、さっき奴隷として競り落とされたインプの子どもが、無理矢理に連れて行かれそうになっている。
あなた
ニフティ! あいつ刺していいわよ!
ニフティ
ホント!? ワアオ♥️
どこからか現れたニフティは、巨大な縫い針でオーナーを突き刺した。
ニフティ
アハハハ~~!!!
ブスッ! ブスッ! アハハハハハ!
楽しそうに何度も何度も針を突き刺すニフティ。
その隙に、私はインプの子どもを逃がした。
あなた
さあ、早く逃げて!
インプの少年
本物だ! カッコいい! ありがとう《ラジオデーモンガール》!
インプの子どもを見送ると、アラスターがとうとうこのオークション会場の全てを破壊したところだった。
アラスター
おっと? 名残惜しいがそろそろ時間だ。それではリスナー諸君! 次回のエンターテイメントもお楽しみに!
ガラガラガラガラガラ!!!
崩落の音と共に、私たちはアラスターの魔法で屋外に移動したのだった。
あなた
イェーーーイ!(*>∇<)ノ★
今回も企画は大成功ね!
私はすっかりいい気分で、カクテルを乾杯した。
本日の打ち上げは町中にあるとあるクラブ。
私、アラスター、ニフティ、ハスクの四人で一つのテーブルをかこみ、軽食や飲み物を楽しんでいる。
お酒は二十歳になってから? ここは地獄だも~ん♪
ハスク
わざと捕まって闇オークション潰すのがエンターテイメントとはな。
あなたのカタカナで名前、お前もすっかり地獄に染まってきたなあ。
ニフティ
今じゃすっかり有名人だもんね。アラスターのラジオのパートナーとしても、人気MCとしても。
ニフティ
あなたのカタカナで名前が地獄に来てくれて本当に嬉しいわ! さすが自慢の友だちよ!
ニフティもニッコニコでお菓子を食べている。私はなでなでとニフティの頭を撫でた。
あなた
そっか、もう地獄に来て一年なんだ。
ね? アラスター……
しかし、肝心のアラスターは、さっきから何やら考え込んでブツブツと呟いている。
あなた
どうしたの?
アラスター
いや、あなたのカタカナで名前が地獄に来て、私のラジオパートナーとなってから早一年。
アラスター
一周年の記念に、今までのものとは全く毛色の違った特別なエンターテイメントを企画したいのだが………これがなかなかいい案が思い浮かばなくてね。
アラスター
どうせなら、地獄に前例のない、斬新で、パッションに満ちた、新しい切り口の何かを始めたいのだが………。
と、その時だ。

店の中にあった大きなテレビ画面にニュース番組が映っている。
チャーリー
そこで、私は考えました。
地獄の人口過剰への、もっと人道的な対策は無いものかと………
テレビ画面には、長い金髪の、赤いタキシードの女の子が熱弁している。
チャーリー
聞いてください皆さん!
私が開くのは史上初の………
チャーリー
罪人を更正させるホテルなのです!
その後、なぜかその子は急に歌い出し、まるでミュージカルのように踊り出した。

罪人の魂を救済し、贖罪によって魂を天国へ送ることで、地獄の人口過密問題を平和的に解決しようという計画ーーーー。


その名を《ハッピーホテル》。

地獄のプリンセス。チャーリーの大計画………。


私は目をキラキラさせてすっかり見入っていた。
周囲は嘲笑に包まれていた。悪魔たちは罪人の堕ちた魂……みんなチャーリーの理想を馬鹿にして笑っている。

でも、私はすっかりその理想に心を奪われていた。

だって、地獄だよ?

周りはみんな悪魔。
悪に染まった堕ちた魂ばかり………。

それを、やり直すチャンスはあると信じて……このチャーリーってお姫様、すごい!!!
あなた
アラスター!
私は興奮して、アラスターにだきついた。
あなた
私! 行きたい! このホテルに!
あなた
チャーリーに会いたい! 
連れてって!
私は確信した。
絶対に面白い!
このホテルに行き、チャーリーに会えばきっと、思いもよらないすごいことが起きる!
あなた
ねえ、一周年記念のエンターテイメントだよ! 私、絶対これがいい!
アラスター? いいでしょ? お願い♥️
アラスター
ああ……私の可愛いあなたのカタカナで名前。
そんな風にオネダリされては、私はすっかりキミの言いなりだよ♥️
アラスターが私の頭を撫でる。
フフッ、アラスターもこのホテルに興味を持ったみたい。
ハスク
ゲッ! マジかよ。
この地獄で贖罪なんて正気の沙汰じゃねえぞ。
ハスクが顔をしかめてグビグビ酒ビンをあおる。
アラスター
では、先に行って待ってるよ。友よ。
ハスク
俺様は行かねえぞ!
今夜はデカイ賭けがあるんだ!
ニフティ
あたしももう少しここで遊んでから
行くね♪
ニフティが手をヒラヒラ振る。

私とアラスターは、二人でクラブを出た。
さっきのニュースによると《ハッピーホテル》は、この街はずれの丘にあるらしい。

私とアラスターは、まっすぐにその道を歩いていく。
アラスター
ねえ、あなたのカタカナで名前……
あなた
なに? アラスター。
ニコッと微笑んでアラスターは言った。
アラスター
一年前のことを覚えているかい?
あの“ゲーム”を。
あなた
ああ? 美鏡さんの魂を捕まえるためのあのギャンブル?
もうすっかり遠い昔みたいだ。
人間として生きてきた十数年よりも、地獄で過ごしたこの一年のほうが、私にすっかり馴染んでいた。
アラスター
……あの《賭け》の本当の目的はね?
キミの本心を知ることだったのだよ。
アラスター
ハスカーが言ったんだ。
アラスター
『人間の本性はギャンブルに現れる』と……。
アラスター
だから、私とハスカーでイカサマをしてゲームを操作し、キミをわざと絶体絶命のピンチに追いやったのさ。
あなた
え? そうだったの!?
アラスター
キミの気持ちを試すような真似をして本当にすまなかった。だが、私を選んでくれて本当に嬉しかった。
アラスター
今、こうして地獄で共にキミと過ごせることが……幸せで仕方がないよ。
あなた
アラスター……
そうしている間に、ホテルのエントランスが見えてきた。
アラスター
さあ、行こうかMy Dear。
キミとなら、きっと最高の
エンターテイメントが作れるさ。
あなた
うん、アラスター。
これからもずっと一緒だよ。
赤い悪魔と手を取り合って。
私たちはホテルのドアをノックした。
そして始まる。





最高のエンターテイメントが。


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