第12話

白昼夢
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2023/03/14 14:52 更新

信じられなかった、信じたくなかった。

時雨の首からは大量の赤。

もう、助からないんだろう。と医療従事者でなくてもわかるほどに大量だった。

映画のワンシーンみたいで。

白昼夢みたいで。

何にも、信じたくなくて。
雨野 透和
時雨、おいてかないで......
大人
ふざけるのもいい加減にしろ!!
バチン、と音がして胸ぐらをつかまれる。

視界には父親の顔。

叩かれた。
大人
迷惑だけかけやがって、何めそめそ泣いてんだ!
大人
人殺しが死んだんだ、誰も悲しまん
大人
お前は何をしているんだ、学校にも行かず、人殺しとお遊び?
大人
ふざけるな!
大人
誰がここまで育ててやったと思ってるんだ。
大人
いい加減にしろ!
時雨の名前すら呼ばない父親。

人殺し、と呼ばれる時雨。

嗚呼、もう、だめだ。

何をしても、何処にいても、

現実なんて、変わらないんだ。
雨野 透和
......
雨野 透和
し、ぐれ......
もう、時雨のことしか頭になかった。

捕まったことなんか覚えていない。

ひたすら父親に殴られて、母親に罵倒されて。それを警察に止められて。

時雨の父親が、死んだ時雨を冷たい目で見ていて。

『当然だ』と言わんばかりの瞳。

時雨がいない。

何もわからない。

何も知りたくない。





覚えてない。
雨野 透和
なんで、おいていったの、
雨野 透和
ひどいよ、時雨
水も飲まずに過ごしていた僕からこぼれた声は、かすれて蝉の群れの鳴き声に消えていった。

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