前の話
一覧へ
次の話

第13話

そう言ってほしかったのだろう
47
2023/03/15 06:02 更新
暑い、暑い日が過ぎていった。

普通とは言えないけれど、前のような日常が少しずつ戻ってきた。


クラスのやつらも、家族も。

みんなみんな、当たり前にいる。
梅沢 時雨
とーわ
時雨の声が聞こえる。

振り向いても、誰もいない。

時雨が死んだことくらい、もうわかっているんだ。

時雨はどこにもいない。
雨野 透和
時雨......
名前を呼んでも、振り返ってくれる時雨はいない。

頭の中を駆け巡るメロディーは時雨が口ずさんでいたものばかりで。
9月のまだ暑さの残る今日。

『梅沢 時雨』と彫られた墓石の前に、僕はひざをつく。
雨野 透和
ねぇ、時雨。
雨野 透和
もう三か月もたったよ。
雨野 透和
夏が終わるよ、時雨。
雨野 透和
時雨がいなくなったことが信じられないんだ。
雨野 透和
今でも時雨がいると思って、時雨を探しちゃうんだ
雨野 透和
僕は、時雨に言いたいことがあったんだ。
雨野 透和
でも、ここに時雨はいないみたいだから。
雨野 透和
時雨に逢えたら伝えるよ。
雨野 透和
それまで待ってて
くしゅん、とくしゃみをするとよみがえる6月のにおい。

あの日のにおいと一緒に僕の頭を飽和するのは

時雨の無邪気な顔と、満面の笑み。



時雨、僕は君に伝えたいことがあるんだ。

誰も何も、悪くないんだよって。

時雨は何も悪くはないって。

もういい、投げ出してしまおうって。



それが時雨の求めていた答えかはわからないけど。

僕は、時雨に伝えたいんだ。

それから、時雨。

沢山愛してるって、大好きって、ありがとうって言ってくれたのに

僕は何も返せなかった。

本当にごめん。



だから、時雨に逢えたら言わせてほしいんだ。


時雨、本当に、本当に愛してる。

時雨のすべてが大好きだった。

本当にありがとう。









また逢える時まで。





少しのさよならを添えて、僕は墓を後にした。

プリ小説オーディオドラマ