目を覚ますと、趣のある木の天井が見えた。
きっと、高専の医務室だろうか。
辺りに人の気配はないし、俺一人のようだ。
重い体を起こす。
身体中に包帯が巻かれていた。
きっと、身体中に傷は残るだろう。
その時、ガラリとドアを開ける音がしてそちらを向く。
俺を見て一目散に家入さんを呼びに行った。
見舞いの品だろうか?レジ袋を床に投げっぱなしで。
パシンッ
乾いた音と共に頬に痛みがはしる。
状況が理解出来ず、痛む頬を手で抑えて上を見上げる。
目隠しを提げたその瞳には怒りが見えた。
直していた口調すら元に戻るくらいに…
もう、あんな悔しい思いすんのはゴメンなんだ。
"楽しい時間はいつか終わる。"
そんなの知ってる。でも、抗いたかった。
…。
謝りたかった。
謝って許されることじゃないけど、それでも…
こういう何気ない会話を聞いて、改めて実感する。
帰って来たんだ…って。
Prrrr…
ピッ
ピッ
電話を慌てて切る。
呪術師のことを言っていいのかわからなかった。
先生、俺、今楽しいよ。
先生のおかげだよ。
今まで閉じこもってたけど、前よりも自分に正直になれた気がします。
先生のことも皆に話そうと思います。
きっと、信じてくれます。
皆も兄さんも優しい人だから。
だから、
この日常が永遠と続きますように___。
END「永遠」
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。