僕は今、なんでこんなことになってるんだろう……。慣れないベッドの中で毛布にくるまりながら、今日1日の出来事を整理する。
イデア・シュラウド。10の齢にして急に異世界に飛ばされてしまうという展開に陥り詰んでいたところを、幸いにも心優しいお姉さんに一時的に引き取られることになった。大体異世界なんてものが本当にあるなんて思いもしなかったし、まさか自分がそこに飛ばされる身になるともつい最近までは思ってもいなかった。
しかしこうなった以上もうどうすることも出来ない、お姉さんのお世話になるぶん手伝いなどを積極的にやって少しでも役に立とう。父さんたちは……きっとすぐ僕がいなくなったて気付いてくれるはず、カローンたちもいるし。だが、僕は『あの事故』があってから数ヶ月に一度程しか自室から出ていない。ORTHOの開発をするにあたり、睡眠や食事の時間が無駄に感じてずっと引きこもって開発に集中しているからだ。
そうなると……僕が突然いなくなっても、また部屋に引きこもってるんだろうって思われて気付いてもらえないかも。そもそも、元の世界に帰れるのかな? 今まで様々な文献を読み漁って来たけれど、ツイステッドワンダーランドの500万年の歴史の中で、異世界に行ったことあるなんて人見たことも聞いたこともない。
そうなれば、ツイステッドワンダーランド内で僕の消息不明は『迷宮入りの事件』としてお蔵入りにされ、みんなから僕の存在も消えてしまうのだろうか。考えれば考えるほどこの先の人生に明るい未来が見えなくなっていく。もうやだ、どうせ僕はオルトを失った時からお先真っ暗なんだ。どんどん希望を見失っていき若干泣きそうになってしまい、少しでも気を紛らわそうと布団を引っ掴み思いっきり包まる。眠りにさえつければ、きっとその瞬間だけはこの苦しみからも解放されるはず。
……なんて、全部自業自得なんだよ。僕が間違えてタルタロスのシステムを解除したから、オルトは悍ましいファントムに取り込まれ冥府に閉じ込められた。自分のせいなのにそれをシュラウド家に生まれたことが原因だって責任転嫁した。少しでも罪悪感から逃れたくて、禁忌を犯してまでオルトを再構築しようとした。もう『オルト』は、どこにもいないってわかっているのに。
そうだ、これはきっと死者の国の王からの天罰なのだ。だから僕みたいな異端者が蔑まれるような、こんな異世界に連れて行かれたんだ。それならいっそのこと、オルトのところに僕の魂も導いてくれればよかった。
数時間前に蹴られたお腹の痛みと共に今後のことを悶々と考えていると、後ろから温かい声が聞こえてくる。思ったよりも動き回ってうるさくしてしまったらしい。お姉さんのことは信用して無いわけでは無いけど、やっぱり初対面の相手と心から安心して過ごせるかと言ったら違う。迷惑をかけたくも無いし、このまま狸寝入りを決め込むことにした。そのままお姉さんに背中を向けて反応しないでいると、突然後ろから腕が伸びてきて僕の体を抱きしめた。
戸惑いを隠せずにいながらも取り敢えず動かないでいると、気が抜けるような「大丈夫、大丈夫だよ」間延びした声が聞こえてくる。一定のリズムでとん、とんと優しくお腹をたたかれて、さっきまで色々考えていたのが馬鹿らしくなるくらい急激に眠気が襲ってくる。
お姉さんの手は父さんみたいにしっかりした大きい手でもなければ、母さんみたいにすらっとした細長い指な訳でもない、華奢な年相応の女の子の手。なのになんだか、父さんと母さんとオルトと4人で一緒に寝ていた時みたいな、優しく包み込んでくれる安心感がある。でも安心感に包み込まれるほど、余計に家族のことを思い出してしまう。
誰にも届かない言葉をぼそっとはいて、気が付いたら僕は眠りについてしまった。











編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!