めまいがしてるみたいに頭がクラクラする。
ボスは吐息を洩らし、諭すような調子でボクに言った。
問いかけると、ヨツバと名乗る女のコは切実な表情で語りだす。
悲しげな嘆願が鳴き声となって辺りに響きわたった。
僕は居てもたってもいられず、前足にグッと力を込めてボスに訴えかける。
一瞬とはいえ、妹のことを忘れるなんて……。ウッカリしている自分に嫌気が差す。
ボスは不機嫌そうに目を閉じたまま、前足の肉球をペロリと舐めた。
恥ずかしさのあまり、条件反射的に言い返す。
ボスは無言のまま、前足に絡んでいた小石を舌ですくい取って、ペッと吐きだした。
それからヨツバのほうに凛々しい顔を向けて言う。
涙ぐむ彼女を見ていると、ボクの胸は疼いた。
本音を言えば、さっきからこのメス猫に近づきたくて仕方がない。そばに寄り添って、淡い色の毛につつまれた頬をそっと舐めてあげたくなる。
ガサガサッと草がせわしなく揺れた。
唐突に、茂みの中から体の大きな猫が駆けてくる。
――副ボスだ!
おなじく茂みから出てきた偵察猫が早口に告げる。
ボスはすばやく体勢を転じ、突き出した拳で副ボスの体をベシッと払いのけた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。