あなたside
抵抗する間もなく、手に持っていた物を童磨に取られる。
私の手は震え、ぐっと目を閉じた。
「だーめ。しっかりみて。」
しかし童磨はそれを許さなかった。
鋭い爪の生えた手で私の顎をつかみ、嫌という程現実を突きつけてくる。
胸糞悪い。
そんな気持ちとは裏腹に、目から雫が零れるのは一体何故だろうか。
こいつといた時間が、私を麻痺させてしまった。
おかしくなってしまった、私自身、
こいつに対する死んで欲しいと願う気持ちが薄れてしまった。
「あなたちゃん。」
ポンッと音を立てて、 毒 の入ったグラスを童磨が開けた。
「俺ね、あなたちゃんと一緒にいれてすごく楽しかった。」
「手離したくないほどに愛しかった。」
「人の幸せのために死ぬなんて、馬鹿だなって思ってた。」
「天国も地獄も、極楽浄土も、存在しないと思ってた。」
「だけど、君といて変わった。」
「愛してるよ。」
童磨は最後に優しく笑い、毒の入ったガラスの中身を一気に飲み干した。
「最後は、あなたちゃんと居たかった。」












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!