前の話
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咲真 花日(さくま はなび)は、誰がみても可愛いとも言えないしブサイクとも言えない子だった。なのでモデルなどのスカウトもされたこともなければ顔で笑われることもない。人に自慢できるようなものもない。いわゆる普通の女子高校生だ。だが、気が弱く、自分の意見を言えない花日はいじめられていた。前髪が長いことも暗くみられる原因なのかもしれない。グループワークの時は最悪だ。誰も私をグループの中に入れてくれない。
どこにも居場所のない花日は、スマホの中の世界が自分の唯一の居場所だった。
その日もいつものように学校のお昼休みにインスタグラムをみていると、lineの通知音が鳴った。見てみると1件のメッセージが届いていた。開いてみると名はなく、アイコンは私のアイコンと同じカワウソの写真だった。不思議な気分と好奇心が混ざり合いながら読み進めてみるとそこにはこんなことが書いてあった。
「過去の私へ あの頃の私は信じないかもしれません。けれど時間がたてばわかるはず。私は人生のターニングポイントで後悔した事がありました。これから私は私のために、後悔を防ぐ方法をlineで送ろうと思います。 2071年6月5日」
花日は誰かのいたずらかと思い、そんなに気にしていなかった。
しかしその時花日は知らなかった、その事が花日の人生を大きく変化させるということを・・・
次の日からそのlineは頻繁に届いた。なぜかいつも昼休みにlineが届く。
「過去の私へ 臆病で警戒心の強いあなたのことだからきっとまだ信用していないはず。
だから証拠に昔私が書いていた日記を元に今日起こる出来事を書いておきます。
2021年6月6日 今日、あなたは国語の授業で分からないところを当てられてしまいます。その時にあなたは恥ずかしい思いをしてしまいます。
解決方法=教科書P21の25行目をよく読んで!」
そんな事が起こるはずがないと、花日は忠告に従わなかった。
5時間目の国語の時間がきた。今日は出席番号が前の小島さんから当たるはずと花日は思っていたが、小島さんが保健室に行き、自分の番になっていた。自分が当たるはずがないと思っていたため、教科書を全く読んでいなかったため、本当に恥ずかしい思いをしてしまった。
家に帰って、もう一度例の人のlineを読み返してみると、行数まで今日の出来事が当たっている。恐怖を感じた花日はなるべくそのlineを開かないようにブロックした。
何日か過ぎ、スマホを見てみると何故かブロックが解除されている。そしてそこにはまた1件のメッセージが入っていた。どこか観念したような気持ちでlineを開くと、
「過去の私へ 私はあなたの秘密を知っています。小さい頃におでこに大きな怪我をしてしまい、それを隠すために前髪を長く伸ばしていますよね?
解決方法=あなたが思っているよりも周りの人達は優しい人もいるのではないのでしょうか?その人達を信じて前髪を切ること!
まだ完全に信用した訳ではなかったが、そうなったらいいなという希望も含めて従うことにした。ハサミを取り出し、花日は長くなっていた前髪を切り出した。
朝、学校に行く景色がいつもと違って見えた。モノクロだった世界が色づき、動き出したように思える。学校に着くとクラスメイトが驚いていた。自分から初めておはようと声をかけてみると、みんな優しくおはようと返してくれた。
昼になり、また例の人からlineがきた。驚くことにlineが来ることが楽しみになっていた。花日のなかでこの人の事を「未来ちゃん」と読んでみることにした。早速lineを読み始めると
「過去の私へ 今日は今の私について書いてみようと思います。実は今、病院に入院しています。67歳の私は、ずっとベットに横たわっています。お見舞いに来てくれる人もいません。思い返してみるといつでも一人で自分から行動する事もなく、自分を変えようとしなかった。あの時私が自分を少しでも変えようとしていたらこんな事になっていなかったと思う事が多々あった。だから、昔の私にも気がついて欲しいという願いが今このような形になってあなたに届いたようです。いつも昼休みにlineが届いているのは、私が高校生のその時間に最も孤独を感じていた時間だったからかもしれません。この時間に対する思いが強いからかもしれません。どうか頑張って!
解決方法=それはあなたが人を信じて答えを出してください。」
返信をしようと思ったが今の花日には言葉が見つからなかった。次返信をしようと花日が思う時はそれはきっと自分に自信を持ち、答えを導き出した時だろうと花日は思った。
数日後の放課後、いじめっ子のリーダー雪ちゃんがいた。勇気を出して声をかけてみた。「みててね!未来ちゃん!」花日は心の中で呟いた。
「ゆ、雪ちゃん!もしよかったらなんだけど、lineこここ、交換しない?」
緊張しながらだけれど明るく話しかけてみると、雪ちゃんが驚いた顔をしながら
「全然いいよ!前はいつも暗くて私たちに怒っているのかと思っていた!」
と雪ちゃんが意外な返答をした。
「え!そんなつもりなかったんだけどな。」
そうか、周りにはそう思われていたんだ。誰も私をグループのなかに入れてくれなかったのではなくて、自分から入れてもらう努力をしていなかった事に気がついた。誤解が解けてよかったな。ありがとう未来ちゃん、雪ちゃん。私に気づかせてくれて。花日は未来ちゃんに報告したくなっていた。急いで家に帰り、未来ちゃんにlineしようと思ったが返信ができないことに気づいた。それから未来ちゃんからlineが来なくなった。
あれから、50年がたち私は未来ちゃんが私にlineを送っていた年齢になった。
今私の周りには病気になったら心から心配してくれる友達がいる。そして、昔の私には想像できなかっただろう雪ちゃんとなんでも話せる親友になっている事を!人は勇気を出して変わりたいという気持ちさえあればいつでも変われる。自分が変わろうと思って起こした行動が未来ではいい方向に変わっているかもしれない。未来ちゃんありがとう、ありがとう、何度言っても足りない気がするぐらい私の人生捨てたもんじゃないなと思えたよ!ありがとう・・・












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。